これを可能にしているのは、同社が1996年から蓄積してきた医療関連データベースだ。昨年度末時点で、10万件におよぶ傷病・診療行為辞書データベース、360万件にものぼる傷病と診療行為・医薬品チェックデータベースになっている。神代氏は「南北に長い日本は、地域によって発症の仕方はさまざま。年間約1億4700万件のレセプト分析で自治体や健保組合を支援していきたい」と語る。同社が最近研究をはじめたのがAI(人工知能)で、IT企業や大学との連携も視野に入れている。
ウェアラブル端末で生活習慣病の重症化を防ぐ
会場内で人だかりが目立ったのが、野村総合研究所と九州大学発のベンチャー企業・カルナヘルスサポート(本社・福岡市)がコラボレーションで出展したブース。「保健事業のフルサービス提供」をコンセプトに、現状分析から施策改善までトータルにサポートするサービス体系を打ち出している。具体的には「健康スコア」「生活習慣病重症化予防プログラム」「革新的施策プロデュース」の3つだ。
野村総研は、これまでのコンサルティング実績を生かし、08年からいち早く、このビジネスに参入した。健康保険組合に対して、健診・レセプトデータの分析と分析結果を使って保健事業推進のサポートをしている。同社デジタル事業推進室の徳田真知子主任コンサルタントは「約10年の取り組みで、健保組合が向き合う課題と求められる姿を明らかにできた。それを解決し、実現するためのボトルネックもはっきりしたことから、今回紹介するサービスが提供可能になった」と説明する。
ここでも、医療費適正化は優先的な課題になっている。生活習慣病の重症化を防ぐことだが、やり方としては、ウェアラブル端末を対象者に配布し、歩数、血圧・心拍数、睡眠時間、疲労度などをモニタリングする。それによって、1人ひとりに適したプログラムを紹介していく。それには、教育入院であるとか通院、遠隔指導といった方法がある。ここで活躍するのがカルナヘルスサポートという会社だ。遠隔による生活習慣病重症化予防の保健指導により、保健スタッフが不在の事業所でも保健指導を実施できるようになった。
ただ、こうした取り組みはなかなか継続がむずかしいという側面もある。そこで、野村総研では独自に開発した専用アプリも提供。スマホで自分の健康状態を把握しつつ、健診の予約なども行えるようになっている。さらに、健康のためのコラムも配信される。徳田さんによれば「これを企業単位で導入していれば、会社や部署で一定期間に歩いた歩数のランキングも競争でき、継続のインセンティブになる」という。
これまでに、野村総研で1000人以上、10健保組合、カルナヘルスサポートでは約1万人の導入実績がある。利用した人たちの声は「体重が減り、血糖値も下がった」といった効果を筆頭に、「1日1万歩を目標に歩くようにしている」とか、「運動や食事に関する知識が格段に増えた」などの前向きな感想が目立つ。