なぜ、野村総合研究所から転職してきたのか?

フローレンスの現場を歩くと実にその人らしく働いている。それをバックアップしているのが働き方革命事業部だ。フローレンスで日本一多様で、働きがいのある組織づくりを実践し、世の中に広げる。それが事業部のミッションだ。人事や経理、総務、法務、システムなどのバックオフィスの約20人からなる部署。14年入社の甲斐綾子さんは人事担当で、15年入社の橋本吉央さんはシステムとサイト発信を担当する。

甲斐さんは出産を機に仕事を辞めたが、子どもが小学3年生のとき、「もう1度働きたい」という思いが湧き上がる。「子育てと仕事、そして自己実現のすべてに、だれもが挑戦できる しなやかで躍動的な社会をめざそう」というフローレンスのビジョンに共感した。

「自分自身が仕事と家庭の両立が難しいと働くことをあきらめたので、両立できる世の中はいいなと思いましたし、願望だけでなく仲間と一緒に実現できるのではないかと思いました」

柔軟な働き方に感心した。たとえば「ズレ勤」。定時の9~18時だけでなく個人の事情に合わせて8~17時や10~19時などにズラして勤務できる。それから「ノマド勤務」。外出時に、近くの喫茶店などで仕事をする制度だ。在宅勤務もあれば、1時間まで時短勤務できる制度もある。さらには遠く金沢市でフルリモートで働いているスタッフもいる。

甲斐さんが集中して業務を行いたいときに活用するのが「引きこもり制度」。「引きこもります」と宣言しカフェで仕事をすることもできるし、オフィスにいてもイヤホンで音楽を聞きながらなど、集中できる環境をつくってよい。

今、力を入れているのが、主に保育スタッフの「長期的な育成と働きがい向上のためのキャリアマップ」を仕組み化すること。キャリアアップやライフイベントに合わせて保育職事務職を問わず柔軟に異動できる仕組みづくりである。保育職という中でも多様な現場がそろうフローレンスであれば、縦にも横にもキャリアを広げていける。

働き方革命事業部の面々は常に働きやすい環境を考え、制度化しているが、本人たちもまた以前とは違う働き方に変わっている。橋本さんは野村総合研究所から転職してきた。

「前職のシステム開発の仕事はやりがいがありました。でも長時間働くことが多くて、帰ると子どもが寝ていて、朝は子どもが起きる前に出社するという生活が当たり前。仕事を辞め専業主婦になった妻に家事・育児を任せっきりにしていて、帰宅すると妻は疲れ切っていました」

友人たちより早く結婚して子どもを持ち、「子育てって楽しいよ」と言いたかったのに、実態が伴わない。フローレンスに入社し働き方革命事業部に配属されると、病児保育の予約システムなど“本業”を担当しながら、働き方革命ブログの発信もはじめた。今はコーポレートサイトのニュース配信の担当や、16年7月にスタートした自社発信メディア『スゴいい保育』の編集長を務める。

フローレンスに移ると残業がほとんどなくなった。毎日18時過ぎには退社し、家族と一緒にご飯を食べ、子どもとお風呂に入る。

「日々の子どもの成長を目の当たりにします。今日は自分で頭が洗えたとか」

橋本さんはワーク・ライフ・バランスのとれた毎日を過ごす。だが転職で給料はずいぶん減ったはずだ。

「私の転職を機に妻も仕事に復帰しました。1度仕事を辞めて子育てを1人で経験してみて、やはり自分も働きたいと気づいたようです。今年1月に第2子が生まれたときは、私も3カ月半くらい育休を取り、その後は時短勤務をしています。給料が全体的に少なくなっても2人で働けばリスクは減るし、お金に代えられないいいこともたくさんあります」

自分が体験した働き方改革を世の中に広めていきたい。橋本さんの願いである。