どれだけ期待できる人でも「1年契約」から
中途採用のリスクを回避するためには、3つのポイントある。「契約の期間」「賃金の設定」および「目標値の設定」という観点から説明をしていこう。
まず契約期間については、できれば1年間の有期労働契約から始めるべきである。1年間の実績を経てから、無期労働契約を締結するかどうかを判断するためである。実績が社長の期待までに至っていない場合には、1年後に賃金の見直しをすることもできる。これが当初から無期労働契約であれば、契約の解消も賃金の減額も容易ではない。
次に中途採用においては、とかく賃金の設定が高くなる傾向がある。これはいまだ実績のない段階で前職の収入をベースに経営者が賃金を設定するからである。明確な人事評価のない企業では、中途採用者と古参社員の賃金の整合性をとるために適当に手当てを設定する傾向がある。手当ての項目の多い会社は、労務管理もずさんであり、労働トラブルが多い。給与明細1枚にも、社長の性格が透けて見えるものである。賃金については、1年後に実績を受けて見直すことができるような設計にしておくべきなのだ。
さらに目標値の設定も欠かせない。社長が「高い賃金を払っているのだからもっと頑張ってもらわないと」と指摘しても、「私なりに頑張っていますよ」と反論されるのが一般的である。このような不毛な議論が成り立つのは、当事者間で目標値について共通認識がないからである。契約時に「新規の法人を年間10件獲得すること」と目標値を明示しておけば、あいまいな議論になることはない。
労働問題が起きない会社にするためには
私は、これまで関与してきた多数の労働事件から、労働問題の起きにくい企業の仕組み作りのコンサルティングを複数の企業でお手伝いしている。ここでのポイントは、知識ではなく「仕組み」ということである。社長と社員とで共有できるルールと言ってもいい。
中途採用のトラブルをはじめ、労働事件は個人の感情が前面に出る傾向がある。感情に流された時点で、すでに社長の負けともいえる。安定した企業を作るためには、感情問題への発展を防ぐ「仕組み」が必要、というのが持論である。
「仕組み」を持たない会社では、労働問題への対応が場当たり的なものになってしまい、たまたま解決したとしても、問題の抜本的な解決にはならず、再発してしまう。ぜひ当ブログを参考にしながら、自社の成長を約束するオリジナルの仕組み作りに挑戦していただきたい。