ジャーナリスト 中野円佳さんからの提言

▼不必要に頻繁な転勤や、社内婚夫婦が同じ県内で働けないルールは見直しを

働く女性にとって自分またはパートナーの転勤は悩ましい問題です。地域が変わることで働き手に広い視野や多様な経験をもたらす可能性はあります。ただ、頻繁な転勤は専業主婦の支えを前提とした高度経済成長期の産物。共働き夫婦では互いの仕事をどうするか、子育て中は保育園や学校をどうするか、悩みが山ほど出てきます。

配偶者の転勤には、帯同している間は休職できる企業、一度退職しても再雇用する制度などを設ける企業が増えています。従来多かった男性の単身赴任や夫の転勤への妻子帯同以外にも、女性の単身赴任、母子赴任(逆もあるでしょう)、妻の転勤に夫と子が帯同するなどさまざまなケースが増えており、手当の出し方や引っ越しの時期を配慮する企業も出ています。

しかし、こうした制度があってもなお、家族が振り回される実態はあります。それは、転勤があまりにも「予測できない」ことに起因していると思います。転勤があるのかないのか、いつどこに何年いくのか。何カ月前に知ることができて、場合によって断ることができるのか。人生を揺るがす転換点が不透明だと、転勤が実際に発生する前からキャリア設計や子どもの教育計画さえも立てにくくなってしまいます。

転勤が嫌なら地域限定職を選ぶという手段もあります。ただ、ある金融機関では地域職の給与を全国転勤の9割で設定していますが、実際は8割程度になっているそうです。昇進にも差がついているからです。「転勤ありを選んでいる以上、有無を言わせない」と覚悟を迫るのではなく、本人の希望や展望を踏まえた転勤が増えることを願います。不必要に頻繁な転勤や社内婚夫婦が同じ県内で働けないというルールがある企業もあり、もう少し家族の生活に配慮が広がるといいと思います。

撮影=市来朋久 協力=ビズリーチ・ウーマン