「人材がすべて」という原点に立ち返る
みなが「変わった」というPRIDEとは何なのか? 江川昌史社長がPRIDEを推進する背景には、人材紹介会社からの率直な、しかしきつい一言があったからだ。
「アクセンチュアさんに人材を紹介しにくくて……」
どうやら長時間労働や働く環境があまりよくないと周囲に思われているようだった。そこで、2015年4月から取り組み始めたのが組織風土改革「Project PRIDE」だ。
「これはいかんと。会社を本当に変えないと、結局人材こそすべての会社なので、悪評がたてば、いい人もとれなくなってしまう。働き方改革だけでなくセクハラ、パワハラ防止、女性活躍を含めたダイバーシティの推進、人材のリクルートと、すべてを含めたチャレンジがPRIDEをスタートしたきっかけですね」
ただの時短ではないし、リモートワークだけでもない。PRIDEのミッションを、「アクセンチュアで働くすべての人々が、プロフェッショナルとしてのあり方に、自信と誇りをもてる未来を創造する全社員イノベーション活動」と掲げた。
PRIDEで江川社長が改革のために絶対にやらなければならないと考えたことは3つある。1つは「時間に依存しない評価」だ。
「かつては納期の追い込みの時期には、毎晩遅くまでいることが価値が高いように思われていた。最後まで体を張って頑張ってくれた人がえらいと。そこで完全にアウトプット主義にした。同じアウトプットの量なら、早く帰った人のほうが有能であるというルールを決めたんです。これは結構変えるのが大変で、まだまだ古い慣習は残っています」
残業についてもメスを入れた。特に、「残業を30時間ぐらいしないと生活が成り立たない」というような、いわゆる「生活残業」はなかなか減らなかった。「そこで、まず全体の給料を上げました。PRIDEの推進が自分にとって不利益ではないと実感してもらうためです」
2つめは、ダイバーシティを阻む「アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)」へのチャレンジだ。
「06年から取り組んでいる女性活躍もまだまだ改革の余地があった。今までは男社会の中で男性が甘やかされてきたので、トレーニングやマイノリティの体験をさせています。圧倒的に女性が多数のところに男性を送り込むなど」
毎年3月、国際女性デーのイベントがあるが、2017年は1000人規模の女性社員が参加する会場に、一部の男性社員を送り込み、自分たちがマイノリティになることを体験させた。無意識にかけているバイアスは、トレーニングしてもすぐになくなるものではない。今も100点満点中70点ぐらいだが、前よりはだいぶ変わった。
3つめは「お客さまの協力」だ。たとえば夜8時に、顧客から「明日の朝までにこの仕事をやっておいて」と依頼されることもある業界だ。全部の依頼に対応すると働き方改革は難しい。「『我々は働き方改革、PRIDEを推進している。国の働き方改革の流れもあるので、協力いただきながらやらせてほしい』と提案書に書いています」