▼弁護士 角田由紀子さんから
提言:男女間および正規と非正規間の格差をなくす政策が不可欠

今、政府がセクハラ防止について真剣に取り組むべきは、実態の深刻さへの理解を深め、必要な対策を行うことだ。そのために、根本原因に切り込むことが必須だ。セクハラは性犯罪であり、被害者の人生を狂わせる。

「平成28年版男女共同参画白書」によれば、男女雇用機会均等法に関する都道府県労働局雇用均等室へ寄せられた相談のうち、46.7%が女性労働者からの相談で、前年より最も大きく増加したのは、セクハラ相談だ。

女性労働者にこの困難をもたらしている理由はいろいろあるが、一つの大きな問題は、女性労働者の56.3%が非正規雇用者であることだ。非正規であることは、彼女たちの賃金が男性や正規女性労働者に比べて低いということだ。男性正社員の給与を100としたとき、女性非正規社員の給与水準は64.2でしかない。この事実は、職場で女性が低い地位に押しとどめられていることを示し、女性労働者を男性労働者が対等な存在としてみないことを正当化することにつながる。

性犯罪およびセクハラは、加害者・被害者が支配・被支配の関係にあることで起きる。賃金格差は、対等な人間であるという認識を妨げる。女性は、男性の性的欲望に奉仕するのが当然という間違った考えを許してしまう。

これらのことを防止するためには、政府が男女間および正規と非正規間の賃金、その他の雇用条件の格差をなくす政策を実現することが不可欠だ。女性が重要な働き手であるというのであれば、女性を被支配的な位置に置くことを許容する仕組みを是正するべきだ。それなしに、セクハラや性犯罪は許されないとお題目を唱えても効果はないだろう。政府が、どこまで真剣に女性労働者の人権を考えているかにすべてはかかっている。

撮影=澁谷高晴