北九州ダイバーシティは新たなステージへ

企業立地支援課課長の小石富美恵さんも以前は女性の活躍を推進する部署に在籍し、池永さんと共にダイバーシティの取り組みに携わってきた人物だ。

「係長昇任試験の際は、上司が背中を押してくれました。自分が管理職になり改めて感じることは、昇任に関しては、女性の方が謙遜し、尻込みする傾向にあること。この状況を変えていくのは上司の的確なサポートだと思っています。また、日々の業務でスキルを向上させる機会を、男女の別なく与えることも上司の重要な役割です」

15年、北九州市は新たなマネージャー育成プロジェクトを始動した。市長をはじめ、全管理職615人が、部下を育てる上司、「イクボス」になることを宣言。管理職の「業績目標」の一つに必ず「イクボス実践」を設定し、その実践度合いを評価して勤勉手当に反映させた。部下が上司を評価する「多面評価制度」にもイクボス実践項目を追加。部下職員からの推薦をもとに「イクボス表彰」を行い、推薦者とペアで市長表彰式を行った。この表彰の様子が他の管理職への刺激となり、実践の意識が高まっていった。

<Action>市長が変わり、古い体質とマインドを塗り替えた!

目標:アクションプラン・イクボス宣言
●女性昇任試験受験率50%
●全管理職がイクボス宣言

チャレンジしやすい試験制度にするため、昇任試験を一本化。市長をはじめ全管理職がイクボス宣言し、ワーク・ライフ・バランスへの理解を示すこと、育児や介護の両立をする部下を応援し、正当に評価することなど「イクボス10か条」を掲げた。

「上司は頭で理解するだけでなく、具体的に行動を起こすことが重要だと思うんです。『背中を押す一言』が大切な第一歩となることもあります。人生の中で働いている時間は長いですよね。子育てや介護、自身の病気などで働きづらい時期があるとき、上司も部下も、お互いさまでサポートし合える環境は大切です。だれもが働きやすくて、成果があがる環境と関係を築くには、管理職の意識改革が必要不可欠だと感じています」

北九州市の大改革は、日本の組織のモデルケースとなるはずだ。

<Achievement>615人の管理職全員がイクボス宣言! 女性の昇任試験受験率50%超え。働きやすさが大きく変化!
市長、副市長らのイクボス宣言に続き、全管理職615人が宣言。2015年5月には、「管理職イクボス実践!宣言式」を開催。

撮影=高巣秀幸