粘土層オヤジとお役所体質をどう変える?
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企業や市民を支援する役所なのに遅れていた
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●古い価値観と慣習、男女間の育成格差が原因だった
「すでに、女性活躍と声高に叫ばなくてもよい段階に来ていると思います」
にこやかな笑顔でそう語るのは北九州市・「女性の輝く社会推進室」の室長、池永紳也さん。同市がダイバーシティ実現に向けて動き始めたのは2007年のこと。女性副市長の選出と子育て支援を公約して当選した北橋健治市長のもと、副市長となった麻田千穂子さんの指揮で、「お役所体質返上」の大改革が始まった。
新たな制度を導入意識の刷新を図る
08年に「女性活躍推進!本部」が設置され、総勢21人のダイバーシティ実行チームが誕生。プランを検討し、すぐに行動へと移された。
「まず取り組んだのは、女性職員にとってロールモデルとなる女性管理職の育成です。計画的・意識的に女性管理職の人材育成と登用を行うことが必要でした。というのも、08年時点での女性管理職比率はわずか6.2%。その背景には、仕事と家庭の両立を不安視する声がありました。ですから、主任への昇任試験は受けるけど、係長のは……という女性が多かったんです」
取り組みにより、各局総務課の人事等の対応を主導する業務の女性比率は07時点の19%から8年間で45%にまで拡大。キャリア形成支援に加え、2段階あった係長への昇任試験を一つにし、管理職への道を短縮。同時に進めていったのがワーク・ライフ・バランスの推進だ。残業や土日出勤があるなどの理由から、女性を配置してこなかった部署にも男女関係ない配属を実施し、性別に関わらない人材育成を促した。
「時間外勤務の削減など、仕事も家庭も充実させる環境を整えながら、女性管理職と男性管理職のグループワークを行い、女性職員へのマネジメントスキルの向上に努めました」
このような多方面からの働きかけにより、昇任試験受験率は大幅にアップし、女性管理職比率も14.5%にまで上昇。若い女性職員が自分の未来を描けるようになったのだ。
「これまで女性を配置してこなかった残業の多い部署の管理職が、育児中の女性の配置に戸惑い、突然『人員を増やしてくれ』と言ってきたこともあります。しかし『同じ一人前の職員として扱ってくれ』と取り合わなかった。結果的に、上司が自分の固定観念を捨て、個々の能力の高さを理解し、仕事の割りあてを考えるようになり、生産性もグンとあがりました」
採用試験にも新たな制度を導入。
「優秀な人材を幅広く確保するため、公務員試験対策が不要で民間志望者も受験できる試験も実施しています」。これにより、優秀な女性が一般企業と同じ視点で役所を就職先として考えるようになり、15年以降、女性の採用が半数を超えている。
決断と実行の8年間。驚くべきスピードで、実現した北九州市のダイバーシティは、女性活躍からさらに次の段階に入ってきているという。
「これからの課題は、退職後に再雇用された職員の一層の活躍や、介護に携わる職員の支援体制の確立です」