後輩に経験を伝えたい上に立つことを意識する

そんななか、彼女は自らのキャリアの将来を想像する際、営業職の上長になりたいという思いを抱き始めた。例えば、初めて課長職になった2006年。首都圏広域支社で生活協同組合やスーパー、ディスカウントストアの企画担当をしていた当時、彼女はふと次のように思ったと言う。

「自分は営業しかやってこなかったし、この仕事が何よりも好き。そんな自分が会社に貢献し続けられるとすれば、それは営業で培った経験を後輩に伝えることしかない」

その思いを抱えながら、彼女はグループ会社のアサヒ フィールド マーケティングへの出向を経て、関東信越統括本部の営業担当部長になった。年上の部下が多い部署だったため、人間関係に気を使いながらチームをまとめ上げる経験を積んだことも、奈良支店長へ抜てきされた後の仕事に大いに活かされることになったという。

(左上から時計回りに)朝は早めに出社してメールなどをチェック。/外回りも多いのでノートPCを愛用。/奈良と大阪を回るため、車で営業回り。/観葉植物が帰宅後の癒やしになっている。

「お互いに助け合い、お互いに理解し合える組織。私を含めてわずか5人ですから、家族のような支店にしようと努力してきました」

県全域を担当する奈良支店長は、様々な行事にアサヒビールの代表として顔を出す立場でもある。ライオンズクラブ、経済同友会、神社仏閣の会合や地元のお祭り……。最近ではどこに行っても顔馴染みになった。

就任から2年が経った2015年、組織改編で奈良支店は奈良と大阪の一部を担当する「大阪奈良支店」へと統合された。支店の人数は5人から10人に増え、支店長としての責任が増した。

「一つの営業所の責任者になると、優秀なプレーヤーが必ずしも優秀なマネジャーではないことがよくわかる。みんなが頑張れる環境を作るには何が必要かを、いつも必死に考えています」

自分のやり方が正しいかどうかはわからない。でも、少なくとも思いだけはきっちり伝えていきたい、と彼女はやはり快活に笑って言うのである。

「もちろんプレッシャーは感じるけれど、一晩寝ればそのプレッシャーもなんのその。一匹狼の営業部員だった頃から、そうやってきましたから」

(上)現在、夫は北海道(同社勤務)、私は大阪に単身赴任のため、月に1度はお互いの住まいを行き来している。(下)夫と会わない週末は、ネイルサロンに行ったり、たまった洗濯や掃除をして、ストレスを発散します。

▼鈴木さんの24時間に密着!

5:00~6:30 起床/入浴・身支度
6:30~7:00 通勤
7:00~8:30 出社・PC作業/上司への報告、実績確認など
8:30~9:00 支店朝礼
9:00~12:00 打ち合わせや事務作業
12:00~13:30 得意先で昼食
13:30~18:00 得意先訪問
18:00~23:00 飲食店視察や企業団体の会合など
23:00~0:30 帰宅
00:30~05:00 就寝

 
鈴木秀子
アサヒビール 大阪統括支社大阪奈良支店 支店長。中央大学経済学部卒業後、1991年にアサヒビール入社。埼玉を始め首都圏の営業を長く担当し、2009年に関連会社アサヒ フィールド マーケティング埼玉支店の支店長に就任。11年に同関東支社長に。13年9月に大阪統括支社奈良支店の支店長、15年4月より現職。

水野浩志=撮影