何度でも通えば、かわいがってもらえる

大きな紙袋を手に持ち、さっそうとオフィスビルのロビーを歩く大谷優子さん。初任地北海道での営業を経て、26歳で東京の広域営業本部に配属されて以来、大手小売りチェーンを担当している。彼女のモットーは、「会いに行く」ことだ。

「相手の状況が許せば、電話で済ませられることでも直接伺って話します。朝は出社前にお客さまのところに顔を出し、昼間もあちこちに出かけているので、ほぼ会社にはいません」

大谷優子さんが勤めるサントリー本社の玄関は、一日に何度も出入りする。紙袋の中には、サンプルや、複数の相手に渡せるように資料一式が何セットも入っている。

この習慣は、新人だった北海道時代に始まる。大学を出たばかりの、20代前半の女性営業。自分の父親と同じ年代の卸業者やバイヤーに、心を開いてもらうには時間がかかった。

「とにかく会って話を聞いてもらおうと必死でした。勤務地は札幌だったんですが、飛行機が霧で飛ばなければ、取引先がある網走まで7時間かけて車を運転していくことも。おお、こんなところまでよく来てくれたな、って。何度も通っていたら、次第にかわいがってもらえるようになったんです」

中堅となった今では、相手との距離を縮めるだけではなく、担当者との雑談から、周りの人との会話から、有益な情報を持ち帰るよう心がけている。

「1の用事で行って、1だけ済ませて帰ることは絶対ありません。行けば新しい何かが、必ずありますから」


 ■好きなことば 
「やれるかやれないかじゃない、やるかやらないかだ」

 ■リラックスするとき 
土日に一人で1時間かけて入る熱いお風呂。

 ■朝ごはん 
オリーブオイルとこしょうのサラダ、みそ汁、ごはん、りんごやバナナ。

 ■好きなくつ 
お気に入りのブランドはなし。半年に1回プランタン銀座でまとめ買い。


サントリー 大谷優子
広域営業本部。ウイスキー、ビール、ワイン、リキュールなど酒類全般の営業を行う。2006年入社。3年半の北海道勤務を経て東京へ。12年から1年間の産休・育休を取得。現在はフレックス制度を活用してフルタイム勤務。1児の母。31歳。

撮影=キッチンミノル