昨年12月19日、バクスタージャパン社(以下、バクスター)は、骨髄移植に用いるフィルター(商品名:ボーンマロウコレクションキット)が欠品になる可能性をホームページで公開し、営業担当者を通じて全国の医師に通知した。翌日にはこれを読売新聞が報じ、あわてた厚生労働省に呼び出された同社は30日、国内在庫が493個であることを公開。骨髄移植は国内で毎月百数十例が行われており、早ければ2009年3月までに在庫がなくなることが明らかとなった。

写真提供=バクスタージャパン
写真提供=バクスタージャパン

骨髄移植は進行した血液がん患者に残された唯一の根治療法だ。患者・家族に強い衝撃が走っただけでなく、厚労省が情報を開示しなかったために、救える命をみすみす失った恐れもあるのだ。

今回の騒動の発端は金融危機だった。「100年に一度」の不況に突入した影響から、ボーンマロウコレクションキットの製造元である米国バクスター社も、事業の大幅な見直し・縮小を迫られた。07年3月、同社は骨髄移植フィルター製造事業部を投資会社に売却。この投資会社は経費節減を目的に、製造工場を人件費の安いドミニカに移した。ところが新会社の経験不足のためかアメリカ食品医薬品局(FDA)への申請が予定より大幅にずれ込み、現時点では生産再開の目処すらたっていない。

ボーンマロウコレクションキットの供給停止は日米とも同じ状況だが、米国では大騒ぎにはなっていない。バイオアクセス社というボルチモアのベンチャー企業がわずかながら製造・販売している同様のキットで代用し、危機的状況を回避しているからだ。

 

「患者の命」より「制度維持」が優先なのか

供給停止に際し、課題は2つあった。まずバイオアクセス社製のキットの確保。ついで確保したキットを遅滞なく患者のもとに届けることだ。前者については、骨髄移植推進財団が直接交渉し、600個のキットを確保した。問題は後者だ。

その時点でバイオアクセス社のキットは、わが国で未承認であった。最も簡単な解決法は、厚労省保険局が、特例として未承認キットと保険診療の併用を認めることだ。でなければ患者は骨髄移植の費用全額(1000万円程度)を自費負担しなければならず、非現実的だ。ところが保険局は「混合診療禁止」の方針を貫き、解釈を変えなかった。