いま活躍している女性管理職たちも、着任当初は不安も失敗もあったはず。ここでは彼女たちが着任した当初の100日間を振り返ってもらい、その実体験や乗り越えたエピソードを語ってもらった。

▼大林組 開発事業本部 企画部企画課長 毛利智恵子さん
部下の成長を妨げないよう、面倒見のよさで失敗も成功も見守る

ゼネコン社員としては珍しい道を歩んできた。文系女性総合職が少ないなか、最初は管理部門を経験し、「どうしても現場に出たくて」と工事事務所に移り、東京・丸の内の丸ビルや品川インターシティなどの工事に立ちあった。現場では「朝からヘルメットと作業服で職人さんたちとラジオ体操をして目立っていましたね(笑)」。

毛利智恵子●大林組 開発事業本部 企画部企画課長。1990年入社。経理、人事、経営企画、丸ビルなどの工事事務所を経て、2003年にプロパティマネジメントの社内ベンチャーを担当。07年課長に。

プロパティマネジメントの社内ベンチャーで、テナントを集め開発、プランニングから、施設運営まで対応する案件をいくつも担当し、事業を軌道にのせ、子会社化の立役者となった。

管理部門、現場、ベンチャーと豊富な経験があり、「もーり姉(ねえ)」の愛称で各部署から相談を持ちかけられる。面倒見がよくて、調整役にも適した人柄。18年目に管理職になる前の次席時代から、後輩を指導し、事業を仕切ったりしてきた。管理職になって自分の担当業務と組織マネジメントの両立で忙しかったが、「自分の権限で業務全般が見渡せ、部下がどこでつまずいているかもわかり、かえってやりやすくなった」。また、同僚には遠慮なく厳しく接していたが、上司になってからは、「個人の資質や役割分担を踏まえてどうあるべきかを考えて接しなければならず、前より優しくなったかも」。

しかし調整役が得意であるがゆえに、それが高じてつい口出ししてしまい、部下の成長を妨げていると思うこともあった。

失敗やつまずきは避けて通れない。だからこそ、失敗を責めるのではなく、そうなった原因を一緒に考えて、「どうしたら次は同じ結果にならずにプラスの方向に変えられるのか」を考える必要性も、管理職になって痛切に感じた。部下には「成功体験も失敗体験も両方を知ってほしい」と思っている。

▼新任管理職時代、こうして乗り切りました!

《Before》面倒見のよさがあだとなり部下に対して過干渉に
管理職になる前からさまざまな部署を経験してきて、調整役が得意で、人に頼られることも多かったので、つい部下の仕事がつまずかないようにアドバイスしてしまうことがあった。


《After》失敗はつきものいかにプラスの方向へ導くのかを部下とともに考える
叱られることを恐れていては何もできないし、つまずかなければ問題は見えない。失敗も成功も両方を経験してもらうことが大切だと痛感し、その過程を見守り、一緒に考えるようになった。

山田 薫=撮影