絶対買ってはいけない3つの商品
【羽田】今、安全に運用するうえで一番いい金融商品は何ですか。
【山崎】個人向け国債の変動金利10年型です。破たんする順番を考えれば、銀行より国家のほうが安心です。また変動金利なので、将来の金利上昇局面においても元本割れしません。さらに、0.05%の最低金利保証があります。
【羽田】定期預金よりは有利ですね。
【山崎】1つ、注意点があります。個人向け国債は、100万円売っても5000円しか銀行や証券会社に手数料が入りません。ですから、これを買いに行くと手数料の高い別の商品を薦めてくるはず。「個人年金保険」、手数料の高い「投資信託」、それから「ラップ口座」、これらはとにかくやらないこと。目の前のセールスマンを養うだけで、自分のお金はやせ細っていきます。
【羽田】老後に年金を受け取れるのか、また格差解消のため資産が多い人は没収されるのではないか、あるいは全世界的に高齢化が進む中、株の買い手はいるのだろうかという不安もあります。
【山崎】30年後を考えて今のお金の戦略を立てるのは得策ではありません。「老後の不安」と「インフレのリスク」という二大テーマは金融界にとっての重要な商材。いわば脅し売りのネタなんです。世界を見渡せば日本より所得の低い国はたくさんあるわけで、生きていけなくなることはなさそうです。ただし、働くすべを持っていて、健康であることが重要でしょうけど。
【羽田】僕も作家を続けていくためには、目の健康を保つことが何より重要と考えているんです(笑)。
【山崎】年金の将来についてですが、確定拠出年金は他人のお金とまざっていませんので、受給権保護の面からは公的年金より安心できます。公的年金は、現状より2.4割減というイメージ。「年金はもらえない」と決めつける必要はありませんし、「年金があるから大丈夫」と期待することもできません。
確定拠出年金の制度が拡充されたり、NISAの対象が広がったりしているのは、「将来の公的年金は今ほど頼りにならないから、新たな仕組みを用意するので官僚を責めないでね」という政府からのメッセージだと思えばいいわけです。でも、羽田さんは確定拠出年金に気づいていらっしゃるということから考えて、およそお金のマネジメントについては心配なさそうですね。
【羽田】貴重な講義を受けられてよかったです。ありがとうございます。
小澤啓司=構成 岡村隆広=撮影