CASE9:せっかく書いた遺言書、形式が合っていないと無効に
先日亡くなった父が事細かに書いた自筆証書遺言を残していました。遺言書は介護をしてきた長女である私に、より手厚く残してくれるような内容。しかし家庭裁判所の検認を受けてみると形式が合っていないということで無効になってしまいました! せっかく書いてくれた遺言を全く生かせないってあり? 何もしていない長男である兄と次男の弟と法定相続分で分けるなんて正直、割に合いません!!
●トラブル予防策
残念ながら自筆証書遺言は、もれや抜けがあり、形式を満たしていなければ全く無効になりますので、このケースも相続人全員で遺産分割することになります。メモ書きやビデオメッセージも全く効力はありません。自筆証書遺言はこうした失敗が少なくありませんから、遺言を残すなら、やっぱり公証人立ち会いで法律的な要件をしっかり満たした、公正証書遺言で作っておいたほうがよいでしょうね。
CASE10:不動産名義がおじいちゃん。相続人が増えて収拾がつかなくなっているけど……
20年前に祖父が他界してからは、長男であるおじ一家が家を継いで住んでいましたが、先日おじが急死。調べてみると家の名義は祖父のままで、相続人はおじの子どもをはじめ、私の父や父の兄弟、従妹など気がつくといっぱい。おじさんやおばさんたちも高齢になってきて近い将来、さらに相続人が増えそうな気配。もはや収拾がつかない状況になっていますが、わが家の分をもらうのはもう諦めたほうがいい?
●トラブル予防策
祖父が亡くなった時点で長男が継ぐという話がついていたなら、そこで名義変更すればよかったのに、しなかったばっかりに相続人が増殖してしまったというケース。遺産分割の際は相続人全員の実印と印鑑証明が必要ですが、これだけ増えてしまうと反対する人も出てきて、もらえても時間と費用がかかるでしょうね。名義変更する際は共有ではなく、できることなら一人にしたほうがよいでしょう。
司法書士、FP。チェスター司法書士事務所代表。1980年静岡県牧之原市生まれ。法テラス、都内司法書士事務所勤務を経て2011年に開業。今買いたいものは、低速ジューサー(ビタミンサーバー)。
イラスト=死後くん