老後の不安が大きく、怖くてお金が使えない

実際に「お金をどう使っていいかわからない」と悩む人たちの相談にも応じるマネーセラピストの安田まゆみさんは、その背景にある心の問題とも向き合っている。

「老後の不安がすごく大きいのです。老後に対する悲観的な予測が漠然とあり、強迫観念にかられて心配でたまらないから、貯金を減らしたくないと。変に先々のことを考えるため、怖くてお金が使えないわけなんですね」

カウンセリングをとおして、安田さんは「本当はどうしたいの?」と聞いてみる。すると、こんな仕事をしたい、自分の夢を追ってみたい、などと本当にやりたいことも出てくるが、貯めたお金は老後のために取っておくので使えない。それゆえ自分の生活が満たされないという、心の葛藤も浮かぶ。

さらに話を聞いていくと、幼少期に親が借金を重ねて苦しむ姿を見ていた女性は、お金や家を持つことへのこだわりが強かった。あるいは親が厳しすぎて自分を認めてもらえなかったという女性は、自己肯定感が低くいくらお金を貯めても不安でならない。親の介護や知人の死によって、過剰に老後の生活を案じる人たちも多い。

「お金を上手に使えない人は、メンタルブロックがかかっていることも多いのです。親子関係などに起因するトラウマを抱えるケース、未来に対する悲観的な見方に振りまわされるケースの2通りがあり、心を閉ざしてしまいます。そうしたメンタルブロックを解消しなければ、先へは進めません」

他人がうらやむ額のお金を持っていても心は満たされず、常にお金への不安が渦巻いている。