「バカンスを楽しむ」文化が根づいている
有給休暇(長期休暇)を取ることも、当然の権利として認められている。
ヨーロッパ諸国では多くの場合、年間5週間の有給休暇が認められていて、消化率はほぼ100%。冬季に1週間、夏季に3~4週間まとめて休むのが一般的だ。夏の休暇は、フランスで「バカンス」、ドイツでは「ウアラウプ」と呼ばれていて、働く人々にとっては一大イベントである。
オランダでは春先になると、「今年の夏はどこに行くの?」という話題で盛り上がり、人気のホテルや格安航空券の争奪戦が早くもはじまるという。
ドイツでは、アパートメントタイプの宿泊施設を借りて、家族でゆっくり過ごす人が多く、とくに人気の高い行き先はイタリアやスペイン。
フランス人は海外にはあまり行かず、南仏のリゾート地で過ごすのがスタンダード。
1カ月近くも休めば当然、経済活動は停滞する。夏になると取引先の担当者と連絡がつかないことも増える。それでも、腹を立てたり文句を言う人はほとんどいない。なぜなら、それは「お互いさま」だから。長期休暇は文化としてしっかり根づいているのだ。
いっぽう、日本はというと、フルタイムで6年半勤めても年20日の有給休暇が認められる程度。その少ない有給も、取得率はわずか48.8%(厚生労働省2014年就労条件総合調査結果)。それなのに、日本の労働生産性はこれらヨーロッパ諸国より低いという悲しい結果が出ている。
人は定時に帰り、思いきって長期休暇を取ったほうが労働意欲が高まり、効率よく働ける――ということなのだろうか?
※リサーチ協力=EYアドバイザリー株式会社 参考資料=「海外に学ぶ労働時間規制」(田端博邦)、「データブック国際労働比較2015」(労働政策研究・研修機構)、「欧州各国の雇用制度一覧」(2009年・JETRO)
イラスト=ハラアツシ