以上のことから、私は女性のほうが投資に向いているのではないかと思っています。もちろん一概には言いきれませんが、女性のほうが投資に必要なバランス感覚を備えているというのが私の実感です。ぜひとも挑戦してみてくださいね。

《大江さんの運用心理アドバイス》
・利益が出ているときは売るタイミングを急がず。損切りは手早くして大損を防ごう!
・投資信託の分配金はうれしく感じるけど実は損しているのかも!?
・「女性は投資が苦手」は嘘! バランス感覚が必要な長期的な運用は女性向き

《7つの専門用語
1. プロスペクト理論
米プリンストン大学のダニエル・カーネマン名誉教授が発表したもの。正式名称は「不確実性下における意思決定に関する理論」。カーネマン教授はこの理論で2002年にノーベル経済学賞を受賞。
2. 損失回避
プロスペクト理論によれば、人間は意思決定を行うにあたり、損をしたくないあまり、損失回避的行動をとる。しかし皮肉なことに、この傾向があまりにも強いとかえって損失につながってしまう。
3. 参照値
人は絶対値より、「参照値」の変化に影響を受ける。本来、株は割安か割高かで考えるべきだが、自分が買ったときの値段を参照値にするため、それより下がると「割安になった」と勘違いしてしまう。
4. 認知バイアス
人間は自分の願望や過去の体験などによる思い込みに影響され、事実の正しい認識や論理的思考ができないことがある。これを認知バイアスという。「目の錯覚」があるように、心にも錯覚があるのだ。
5. メンタルアカウンティング
給料天引きの貯金が成功しやすいのは、「このお金は最初からなかったもの」と認識するから。このように心のなかで無意識に仕分けされることをメンタルアカウンティング(心の会計)という。
6. 売買回転率
一定期間の売買高を平均上場株式数で割ることで求められる。売買回転率が高い=頻繁に売り買いしているということ。短期の取引は投機性が高くなるので、安定した利益を出すことが難しい。
7. 時間割引率
人は将来得られる利益よりも、目の前の利益に魅力を感じる。これを「時間割引率が高い」という。旅行や買い物など現在の楽しみを我慢して、遠い老後のために貯金をするのが難しいのはこのため。

大江英樹
大手証券会社で25年にわたり、個人の資産運用業務に従事。2012年9月にオフィス・リベルタスを設立。行動経済学、資産運用等をテーマとし、寄稿や書籍の執筆、講演など幅広く活動を行う。『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。CFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。

構成=長山清子 撮影=山田 薫