女性のほうが投資に向いている
このように投資には人間の心理が強く影響するのですが、そこに男女差は基本的にありません。しかし多少の差はあり、強いて言えば私は女性のほうが投資に向いていると思います。もっともプロスペクト理論の損失回避の気持ちは女性のほうが強い。ですから早い時期に損切りをするのが苦手です。それから女性は、“無料”に弱いところがあります。よくいわれるのが、「男性は好きなものなら高くても買う。女性は好きでないものでも安かったら買う」。これも「損をしたくない」という気持ちが強いからでしょう。
しかし、女性は売買回転率が低いという特徴があります。売買回転率とは、株を売ったり買ったりする頻度の多さをあらわす指標ですが、女性はこれが低い傾向にあるのです。男性は頻繁に心が揺れ動いて、短期的に売買する傾向があります。それが悪いとは言いませんが、そのような投資スタイルで利益を上げることは難しい。
さらに、時間割引率も女性のほうが低い傾向にあります。時間割引率とは、行動経済学の言葉で、「遠い将来に得られるかもしれない利益は、現在確実に得られる利益より価値が低い」と感じる傾向のことです。たとえば1週間後に5000円もらえるよりは、今日1000円もらえたほうがいいというように、将来の利益と現在の利益を天秤にかけた場合、現在の利益を優先してしまうことを「時間割引率が高い」といいます。つまり男性は目先の得に飛びつきがちですが、女性はどちらが得かを見極めてじっと待つことができる。ですから長期投資には女性のほうが向いているでしょう。
また、男性は女性よりも、他人との比較で感じる幸福感が高い傾向にあります。たとえば「同級生のなかで、自分がいちばん部長になるのが早かった」というように、他人と自分を比べて幸福を感じるのは男性のほうが多いのです。これは他人の動向に引きずられやすい=自分のペースで投資ができないともいえます。
それに、たまに営業担当者や投信会社に惚れ込んでしまって、「この人の薦める金融商品なら間違いない」と思い込んでしまう人がいます。私はこれを「信仰心と原理主義に陥る」と呼んでいますが、これは投資において、もっともやってはいけないことです。これも男性のほうが多いようです。