よい人材を支えるのは事業者
ただし、「保育のマインド」を高く保ち続けるためには、ある程度の施設・設備が整うことも必要です。物理的な環境が悪いと、保育士の負担は重くなり、保育の質を高めようと努力することに疲れてしまうからです。
また、賃金などの処遇が悪いと職員が定着しません。バラバラの職員集団では、「保育のマインド」は育まれません。新米ばかりで施設長の指導力がないと、チームワークができず、一人ひとりの負担が重くなり、退職率が高まり、さらにチームワークが崩れて行くという悪循環にも陥ります。そんな施設では研修を受けるゆとりも失われていたりします。
では、施設・設備への投資や、職員の待遇を決めているのは誰かというと、事業者です。つまり、確かに、個々の施設の質は人材によって決まるけれども、長期的に見れば、事業者の姿勢が施設の人材のありようを左右するというわけです。
数だけ合わせる人の動かし方ではダメ
待機児童が多い地域では、事業拡大意欲が旺盛な株式会社などの事業者によって待機児童対策が進んでいる地域も多いと思います。
ただし、急拡大する事業者の中には、「保育のマインド」を育むことに無頓着になってしまっている事業者もいます。たとえば、こんなやり方では、一つひとつの施設の質は上がりません。
・施設長が1年で異動することが普通に行われている
・保育士が日々系列施設間を移動している(足りない店舗にバイトを動かす飲食店方式)
・クラス担任にもパート保育士を充てている
このような人の動かし方をすると、「保育のマインド」を共有する職員集団がつくれないばかりか、保育士と子どもとの安定した関係もできないため、子どもにとって「つらい」保育になります。保育士としても、子どもの育ちを継続的に見つめて保育を計画的に考えることができないので、やりがいが感じられにくくなります。そして、子ども一人ひとりを細やかに見ることが難しくなれば、事故が起こる確率も高まります。