「おじさまあくび」でトレーニング!

潤いのある声の出し方はとても簡単。あくびをすればいいんです。

時々、びっくりするようなあくびをする年配の男性がいませんか。あくびのあとに「ああー」みたいな声を出すおじさま。実は、あれが最高のボイストレーニングになっているんです。

「おじさまあくび」をすると地声が出ます。実はこれが最高のボイストーニング(イラスト=米山夏子)

思い切り両手を上げて、顔を上に向け、ふりでいいので「ああー」と伸びとあくびをしてください。そうしているうちに本当にあくびが出てきます。そして手をおろすときに、おじさまになったつもりで「ああー」と声を出す。これがあなたの地声。脱力したときの、思い切り気持ちよさそうな、おじさまあくびのあとの声は力みがありません。ぜひ一度、人に聞こえないところで、おじさまあくびをして、自分の声を聞いてみてください。こんなに低いのかと驚く女性が多いはずです。

プレゼン前や会議前など人前で話すときは、洗面所などで事前にあくびをしてから臨むことをお勧めします。口を1回、最大限開けてから。朝一会議のプレゼンは声が出ません。ひとり暮らしであればなおさらです。プレゼンの日は準備体操として、たくさん声を出しておく。かつ直前に、別の場所で大あくびをする。準備体操をしないと俊敏に運動できないように、事前に1度口を「ああー」と開けておけば、いい声を出すための準備体操になります。

また、艶のある声を手に入れるためには、5、6m先の人に届けるつもりで話します。焦点を合わせて声を投げるようになイメージです。30人ぐらいの会議室で、上座から下座まで「資料がそろっていますか」と声をかけるくらいの距離です。意外と遠い、と感じることでしょう。練習としてお勧めなのは、カフェや居酒屋などで「すみませーん」と店員を呼ぶこと。ちょっと混雑していて、すぐには気づいてもらえなさそうな店がいいです。地声を知って、艶と張りのある声が出せるようにしましょう。

メイクのスキルを磨くように自分の声を磨き、なりたい自分を表現しましょう。

矢野 香
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号取得。現在、国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。全国から研修・講演依頼があとをたたない。著書に、ベストセラー『その話し方では軽すぎます! エグゼクティブが鍛えている「人前で話す技法」』(すばる舎)など。http://www.authenty.co.jp/

構成=坂口さゆり イラスト=米山夏子