提言:正社員・非正社員を問わず年収400万円を目指す政策を

●ジャーナリスト 小林美希さんから

1985年に男女雇用機会均等法と労働者派遣法が成立し、女性の雇用の間口は広がったものの、非正規社員が激増しました。同年、プラザ合意が締結され、輸出メーカーに為替が不利な状況で、当時を知る経営者は「利益を出すため、企業は人件費に手をつけたかった」と証言しています。

それから30年経った2015年、女性活躍推進法と労働者派遣法の改正がセットで行われました。派遣はますます企業にとって都合の良いものとなりました。あたかも女性の労働を後押しするような政策を前面に押し出し、その背後で雇用を劣化させる法制度ができているのは、現実には「希望を生み出す強い経済ではない」という表れではないでしょうか。マクロ経済は、ミクロの労働の集合体です。労働者を守る法制度なくして強い経済は生まれません。

保育所の問題も大きい。待機児童の解消を急ピッチに行い、保育所の“建設ラッシュ”が起こり、人材が追い付かずに保育の質が低下しています。就労保育士が約40万人に対し、資格がありながら働いていない潜在保育士は約60万人。保育士の労働条件が悪く、良い保育に専念できないブラック保育所が乱立しては、親は安心して働けません。待遇改善のため保育予算の見直しが喫緊の課題です。

25~34歳の妊娠適齢期の女性の4割が非正社員です。「妊娠解雇」に遭いやすく、育児休業を取る要件も厳しい。非正社員で育児休業給付金を得ているのは、全体の4%程度です。本来、おめでたいはずの妊娠が冷遇される中で介護離職ゼロが実現するのでしょうか。これだけ非正社員が増加した現在、少なくとも、同一労働同一賃金を実現し、正社員・非正社員を問わず年収400万円を目指す政策が必要です。

撮影=市来朋久