楽なことに未来はない

【原田】自分の殻を壊して成長する。ご自身もそうですか?

【森川】そうですね。自分で追い込む方だと思います。そういう生き方なんでしょうね。

【原田】山の頂上に到達しても、そこに安住はできないのでしょうか?

【森川】昨日まで山だと思っていたものがあっという間に崩されたり、より高い山が隣にできたりすることはしょっちゅう起こります。常に山は山でなくなることを知っているので、頂上に長く居ようとは思いません。登った瞬間が大事だと思います。

ただ私も、いつも山を登っていたわけではなくて、以前は楽な生き方をしていました。でも、今は「楽なことに未来はない」と感じています。自分で道を作ることが、自由になるための一番の方法、唯一の方法だと思います。

【原田】お仕事は楽しいですか?

【森川】ものすごく楽しいわけでも、つらいわけでもありません。人生イコール仕事ですから。

楽しいことって慣れてしまいます。昨日楽しかったことは、今日はもう慣れて楽しくなくなってしまう。一方、つらいことにはなかなか慣れません。昨日つらいことは今日もつらい。だから、自分の楽しいことへの期待度をあまり上げないようにしています。毎日おいしいものばかり食べていると、ちょっとまずいものが食べられなくなってしまいますから。ただ、毎日まずいものばかり食べていても、感性が鈍ってしまう。まずいものとおいしいもののギャップがある状態を保つことが、幸せを感じ続ける秘訣なのかもしれませんね。

■インタビューを終えて
以前、取材とは別の機会に伺ったのですが、森川さんの印象に残る幼少期の体験として、生家の周りの急速な都市開発があるそうです。「子供の頃に生活範囲の自然がなくなることに喪失感などありましたか?」とお伺いしたところ、「むしろ発展や進歩の真っただ中にいるワクワクがあった」とおっしゃっていたのが印象的でした。森川さんは大きな絵を描いて実現しにいく、そのためのストイックさを保てる方で、華々しい実績がそれを証明しています。これからも、生きることに貪欲な森川さんでいてください。本日はありがとうございました。(原田博植)
原田博植(はらだ・ひろうえ)
株式会社リクルートライフスタイル ネットビジネス本部 アナリスト。2012年に株式会社リクルートへ入社。人材事業(リクナビNEXT・リクルートエージェント)、販促事業(じゃらん・ホットペッパー グルメ・ホットペッパービューティー)、EC事業(ポンパレモール)にてデータベース改良とアルゴリズム開発を歴任。2013年日本のデータサイエンス技術書の草分け「データサイエンティスト養成読本」執筆。2014年業界団体「丸の内アナリティクス」を立ち上げ主宰。2015年データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー受賞。早稲田大学創造理工学部招聘教授。

構成=大井明子 撮影=岡村隆広