オンラインとリアルをまたぐ送客が強み
このような収支の関係から、婚活サービスのビジネスモデルは軒並み高収益だと考えられます。しかし、その中でもIBJは高い収益率を誇っています。IBJは優れたビジネスモデルと業績を有する企業を表彰する「ポーター賞2015」を受賞していますが、その受賞企業レポートには、「(IBJの収益性は)投下資本利益率、営業利益率ともに5年間平均で業界を上回っている(業界平均との収益性比較は、PwC Japanの協力を得ている)」との記述があります。
また、このレポートでは、IBJの特徴として、「まだ結婚を強く意識していない世代の出会い支援から、結婚相談所による成婚支援まで、オンラインとリアルをまたいで幅広く手掛けている点にある。競合他社は、オンラインに特化したマッチングサイトやリアルの結婚相談所など、部分に特化していることが多い」と述べられています。
そう、IBJの高収益の理由は、婚活ビジネスに関して利用者の婚活の段階やニーズに合わせて複数のメニューを用意し、各事業間で相乗効果を働かせながら売上を伸ばしているところにありました。婚活サイトを安く提供することで会員数を増やし、そしてその会員をより高いサービスに導いたり、また会員数の多さを売りに法人をも顧客に取り込んだりすることで、高収益につなげているのです。
社会問題を解決するという時代のニーズに合った事業に加え、こうした賢いビジネスモデルがあるとまさに鬼に金棒です。IBJは2016年12月期の売上高を前年比18%増と予想しており、さらなる発展が期待できそうです。
公認会計士
早稲田大学政治経済学部卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格し、優成監査法人勤務を経て独立。在職中に製造業、サービス業、小売業、不動産業など、さまざまな業種の会社の監査に従事する。上場準備企業や倒産企業の監査を通して、飛び交う情報に翻弄されずに会社の実力を見極めるためには有価証券報告書の読解が必要不可欠だと感じ、独立後に『「本当にいい会社」が一目でわかる有価証券報告書の読み方』(プレジデント社)を執筆。現在は会計コンサルのかたわら講演や執筆も行っている。他の著書に『ディズニー魔法の会計』(中経出版)などがある。