海外セレブから企業まで徹底的に事前調査! 資料からネイルまで相手色に染まります
「かっちりした資料って、あまり作らないんです」と話す世永亜実さん。女性に人気のファッションブランド、サマンサタバサの上席執行役員を務めながら、20人以上いるプレスチームを統括する。今は自分で作るよりも、新商品のリリースやイベント案内など、部下が作った資料をチェックするほうが多いという。
しかし、資料というのは最低限のもので、重要なのはそれを伝える人のほうだと世永さんは話す。
「相手先で提案するときもリリースなどは持っていっても、紙だけでは伝わらないものが絶対あると思っています。直接会いに行って、商品を見てもらったり、思いを伝えたりすることを大事にしています」
それは相手が大手企業でも大物セレブでも同様だ。サマンサタバサに転職した次の日から、決まったばかりのヒルトン姉妹を起用したプロモーションを担当した。「通訳を通しても仲良くなれない」と交渉から飛行機やホテルの手配まで自分で行い、成功を収めてきた。
「相手がセレブリティーなら何が好きで、どんなファッションに興味があるか、徹底的に調べて臨みます。その人が好きな食べ物を用意して、ネイルからファッションまで相手が喜びそうなスタイルになって出迎える。企業なら担当部署以外の最新ニュースもチェックしてから行く。『相手のことを考えてみて』と伝え続けていたら、スタッフも言われなくてもそうして準備するようになったんです」
だからこそ、ミランダ・カーなど海外セレブの信頼を得られ、帰るときには「素晴らしいチームね」と言ってもらえる関係ができあがっている。
実は、かしこまった資料は最低限でも、手書きの資料は重視している。部下には率先して仕事ができるようになってほしいと、入社1、2年目から段取りのメモやスケジュールの書き方を毎日のようにチェックしてアドバイスする。参考になりそうな切り抜きや仕事相手の連絡先まで、ノート1冊にまとめることで、煩雑になりがちな作業をきっちりと、抜けなく回していく。
「こうして資料を1冊にまとめることで、自分の中に引き出しができるんです。女性はマルチタスクに慣れている分、つい同時並行しすぎて混乱しがち。そんなとき『1個ずつ引き出しを閉めながらやってみて』と話し、ノートを見返してもらう。すると落ち着いて整理できるようになるんです」
彼女にとっての資料とは、自分の中の引き出しであり、経験として蓄積できるもの。そして、その方法を教えることで、次世代の女性たちを育てていくバトンの役割も果たすのだ。
Google for Work Apps&Cloud営業。新卒で外資系IT企業に就職。営業、経営企画を経て、2014年グーグルに転職。国内の顧客向けにGoogle Apps for WorkやChromeデバイスなどを活用した新しい働き方を提案する営業を担当。
中村祐子
日本IBM グローバル・ビジネス・サービス事業 トヨタ・グローバル・サービス パートナー。1989年日本IBM入社。システムエンジニアとして電機業界を担当。93年以降は製造業を中心に業務開発プロジェクトに携わる。現在はアカウントパートナーとして顧客の業務課題解決を支援している。
世永亜実
Samantha Thavasa Japan Limited 上席執行役員 プレスマーケティング部。芸能プロダクションの宣伝を経て、2001年にサマンサタバサに広報として転職。ヒルトン姉妹やミランダー・カーなどの大物セレブを起用したプロモーションを次々担当。
撮影=キッチンミノル、邑口京一郎