ルール5:相手のリアリティーに訴える表現を

●「パッとしない」「よくわからない」にはワケがある

イラスト=Takayo Akiyama

相手に「よくわからない」と思われてしまう原因のひとつは、具体性に欠けることです。

では具体的な数字を出せばいいかといえば、そう単純ではありません。相手が日常的に見慣れている分野なら、その数字が大きいのか小さいのか瞬時にわかりますが、専門外の人には、ピンときません。

「iPod」誕生時のキャッチコピーは、「1000曲をポケットに」でした。容量何GB、重量何gと言われても、一般ユーザーにはよくわかりません。ところが、1000曲を持ち歩ける、ポケットに収まると聞けば、「これはすごい」と素直に感動できます。

数字も、比較対象があってこそ革新性を実感できるのです。具体性を持たせるには、相手のリアリティーに即した表現が必要。

ひとつのテクニックとして、大きな数字は割って伝えるのが効果的です。「睡眠時間は年間2920時間」よりも、「一日の3分の1は寝て過ごす」と言うほうが、より大きなインパクトを相手に与えることができるでしょう。

ルール6:書くべきことが抜けていないか確認を

●「空、雨、傘」がそろっていますか?

イラスト=Takayo Akiyama

「空、雨、傘」は、コンサルティング業界では徹底的にたたき込まれるフレームワークのひとつ。「空を見たら雲が広がっている」(事実)→「雨が降りそうだ」(解釈)→「傘を持っていこう」(行動)という一連の流れです。

「春の行楽シーズンに向けて、来月号は旅特集をやりましょう」と提案しても、相手は「なぜ今?」と思うかもしれません。「旅行会社のパンフレットが出そろう前だから雑誌が売れる」という解釈が抜け落ちているからです。

「空、雨、傘」がそろわない資料は意外と多く見かけます。自分ではそろえているつもりでも、ロジックがつながっていないケースもあります。

データ集計だけなら機械にもできますが、その事実から見識を導き出すのは人間にしかできません。

言い換えれば、これこそが知的生産者としての自分の価値の見せどころです。いま一度、自分の資料に「空、雨、傘」がそろっているか見直してみましょう。