ある夫婦がいたとします。別々の企業で働いていて、子供ができたとなった時に、男性が働いている企業は、お祝い金を用意したり、ごく短い育児休暇を設定したりと、それなりの負担をするでしょう。しかし、だからといって離職をするという想定はしませんし、時短で働きたいという申し出があるとも考えていません。

しかし、女性が働いている企業では、産休、育休、時短勤務を視野に入れ、戦力ダウンしている間のリソースの確保と費用負担を計算して、と大忙しです。これは「どうして女性が働く企業だけが大きな負担をしているのか」とも見える問題なのです。

当たり前を、少しだけ疑ってみるところから始まる

子育ては女性がするものだ、男性のキャリアプランは女性とは違って簡単には変えられない。そんな感覚が頭の中にまだ残っていませんか? そして、家庭内での話し合いでも、その前提で役割が決まり、ワークスタイルも決まり……という流れになっていませんか? そして、それは本当に正しい、当たり前のことなのでしょうか。

素晴らしい制度が用意されたとしても、制度を運用するための負担がどこか特定の場所に偏ってしまったら、結果としてその負担を軽減する策がとられることは容易に想像できます。それは、巡り巡って制度を利用する側、制度を用意する側双方の不利益にもつながりかねません。そうさせないためにも、個人個人がいままでの当たり前を、少しだけ疑ってみることから始める必要がありそうです。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。