東京・神楽坂の洋菓子店で、オーナーを務める三谷智恵さん。証券会社の営業ウーマンとしてバリバリ働いていたが、学生時代から興味のあったパリの製菓学校へ入学することに。「出店は考えていなかった」という彼女の背中を押してくれた人とは?

趣味の域から本業のパティシエールに

アミティエ神楽坂 代表取締役 三谷智恵さん

「子どもの頃から、自分が何者かと語ることができる職業に就きたい……と、漠然と考えていました」

東京・神楽坂の裏通りに面した洋菓子店。オーナーを務める三谷智恵さんの前歴は、証券会社の営業ウーマン。男性社員と肩を並べて仕事をこなし、残業、休日出勤は当たり前。それでも、証券会社への就職はお金をためることだけを目的としていたため、目標額を達成した1999年には会社をあっさり退職。学生時代から興味のあったパリの製菓学校へ入学することに。「この時点では、出店なんてまったく考えていなかった」。帰国後、今度は別の証券会社へ再就職。前職の同僚との交際を経て、2002年結婚。会社を辞めて、お菓子教室を開くようになる。

「主人が会社員という後ろ盾があるせいか、お菓子づくりは趣味程度で十分と思っていました。そんな私の背中を押してくれたのが主人でした」

趣味ではなく、本業のパティシエールを目指してみては。そんな声に後押しされ、2006年に再度渡仏。今度は本格的な製菓コースを受講し、本場のパリのパティスリーの現場も経験。それでも、帰国後は店を開く勇気が持てないまま数カ月を過ごすことに。ここでも、再び背中を押したのがご主人。

「肉体的にも精神的にも厳しい職業なのに加え、証券会社時代に比べてもお金は稼げない。だから前へ進むことには躊躇(ちゅうちょ)しました。そんな気持ちを主人に伝えたら、もろ手を挙げて協力すると言ってくれました」