デモグラフィー型ダイバーシティのマイナス面を解消する方法
それではどうすればデモグラフィー型のマイナス面を解消できるでしょうか。
まずは徹底した意識の植え付けです。マイノリティーへの偏見を徹底的に取り除くこと。世界で最もイノベーティブな企業といわれているグーグルは、スタンフォード大学の心理学の研究者と組んで、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を取り除くための研修を徹底的に行っています。
もう1つの方法は、「フォルトライン(組織の断層)理論」というものを応用する方法です。例えば男性と女性という対立軸があるところへ、アメリカ人やフランス人が入ってくるとどうなるでしょうか。日本人と外国人という対立軸ができます。そこへさらに高齢者や障害者を入れてみるとどうでしょう。対立軸は複数になります。
そうなると人間はわけが分からなくなって、逆に認知の壁が下がるのです。男性と女性というように軸が1つしかない場合は、男か女かの認知で区別してしまう。しかしさまざまな人が加わると、断層効果が弱まり、コミュニケーションが円滑に進むのです。
やるなら徹底的に、対立軸を複数にするのがポイント
ですからダイバーシティを取り込むなら、徹底的にやらなければいけません。女性を増やすことももちろん大事ですが、それだけでなく、年配の人が多い会社なら若い人を入れるとか、日本人ばかりなら外国人も入れるなどすべきです。そうすれば男と女という軸が取り払われるので、デモグラフィー型のマイナス効果がなくなり、タスク型のプラス効果が強くなります。逆に言えば、中途半端なダイバーシティ化では、本当のダイバーシティのプラス効果は得られないということです。
今、ダイバーシティという言葉が先行しています。しかしダイバーシティは取り扱いを間違えると、逆効果になることもある。あなたの会社では、何のためにダイバーシティをやるのか。ダイバーシティは本当にタスク型になっているか。もしかしたら形だけ整えた、デモグラフィー型のダイバーシティになっていないか。そこを改めて考えていただければと思います。
慶應義塾大学経済学部卒業。米ピッツバーグ大学経営大学院博士号取得。三菱総合研究所、ニューヨーク州立大学バッファロー校助教授を経て、2013年9月より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』。
撮影=岡村隆広