日本固有のエイジダイバーシティとは

ご存じの通り、ダイバーシティはジェンダーだけではない。欧米ではApple、Googleなどの大手企業が軒並み「ダイバーシティ・レポート」を公開しており、企業にもよるが、そこでは性別、人種、年齢、障害の有る無しなどの点から、自社の多様性を測定している。日本でも公開する企業が増えている。

日本で身近なダイバーシティのトピックとしては、性別の他に年齢がある。ヘイズでは日本企業から依頼を受ける際に、「男性、年齢は30代半ばから40代半ば、こういう大学を卒業した人」といった、スキル以外の具体的な要件をリクエストされることがたまにあるそうだ。しかし、「これは他国ではありえない」とライト氏。

条件を絞るほど募集対象を狭めることになるので、優秀な人材を取りこぼしてしまう可能性がある、と言うのだ。年齢による制限が当たり前の日本企業にとっては、意識の変化が求められるところだ。

若い、あるいは年齢が上だ、という両方の差別パターンがあるが、「ともに固定されていた見方がオープンになってきた」とライト氏。幸い、少しずつ変化はしているようだ。若すぎるが、あるいは年が上すぎるがと思いながら採用するところが増えているのだ。これは、経営資源が少なく、すぐに人手が欲しいといった企業が、どちらかというと“迫られて”する妥協のようだが、結果が出てくればエイジダイバーシティ(年齢の多様化)に関する理解の広まりに期待できる。

オープンで革新的な環境こそが、未来を創る

このように、ダイバーシティは誰にとっても身近なものだが、少子化、女性の社会進出が遅れており、さらに人材のミスマッチ(企業が求めているスキルと求職者が持つスキルのギャップ)が世界的に見て大きいといわれる日本では、差し迫った課題といえそうだ。

「管理職における女性の比率が、企業の業績によい影響をもたらすことはさまざまな調査で実証されています」とライト氏。島国であり、年功序列など特有の制度が残る日本では、長年固定された意識を変えるのは簡単なことではないが、「ダイバーシティのよいところは、国や場所、企業の別に関わらず導入できて、体験できることです。ダイバーシティにより、企業はよりオープンに、革新的になることができます」とライト氏は語る。

オープン、革新こそ、日本の企業が求めているものだ。そのためには、やはりダイバーシティが重要なのだ。

撮影=森崎純子