「少子高齢化で、女性も労働力に組み込まなければ、日本の労働人口が先細る」「日本は女性の地位が低いなどと、外圧もうるさいし」――政治家が“女性活躍推進”を進める本当の理由はこの辺であり、決して女性たちの「働きたい」との思いや職業人としての矜恃をくみ上げたわけでない。彼女たちの意思本位で決められたとはとても言えない制度の中で、育児と会社勤めを両立させ、「育休世代」と呼ばれる働く母親たちは、十分素直に政策に従い、産後もすぐに社会復帰して、M字カーブの谷を上げるのに寄与している。

政策が動かしている気になっている女性たちは、のっぺらぼうな“層”や“労働力の集合体”ではない。一人一人に人格があり、人生があり、職業人としてのスキルや専門性を持つ、複雑で深遠な人間なのだ。立派な一個の人格なんだよ、若い女だって。人間なのだから、何かのきっかけで暴発し得るエネルギーも、もちろん内包している。政治家のあなたたちが活躍させようとしているのは、あなたたちがにわかには信じられないような「死ね!!!」という言葉が内側から噴き出す強さと激しさを持った、現代の女性たちなのですよ。

河崎環(かわさき・たまき)
フリーライター/コラムニスト。1973年京都生まれ、神奈川育ち。乙女座B型。執筆歴15年。分野は教育・子育て、グローバル政治経済、デザインその他の雑食性。 Webメディア、新聞雑誌、テレビ・ラジオなどにて執筆・出演多数、政府広報誌や行政白書にも参加する。好物は美味いものと美しいもの、刺さる言葉の数々。悩みは加齢に伴うオッサン化問題。