2つの式、実務で役立てるには?

さて、ここで、最初に説明した2つの式に戻りましょう。

A. 売上=総費用
B. 総費用=変動費+固定費

これらは、“売上=総費用”となる売上が損益分岐点売上高で、総費用は変動、固定の2つの費用の合計で求められますよ、ということを意味する式でした。

この2つの式を使えば、費用に応じた“利益を出すために最低限必要な売上高=損益分岐点売上高”を把握することができます。

損益分岐点の出し方を見ていきましょう。例えば、原材料費や燃料費などの変動費が売上の3割、固定費が毎月70万円かかる事業部があるとしましょう。まず、B.の式、総費用=変動費+固定費に当てはめると、総費用=0.3×損益分岐点売上高+70万円と表せます(変動費は売上高の3割かかるので“0.3×損益分岐点売上高”となります)。

これをA.の式、売上=総費用に当てはめれば、損益分岐点売上高=0.3×損益分岐点売上高+70万円となります。この式が成り立つ売上高ならば、少なくとも赤字にはならない、利益0以上になるはずですよね。。

式の左辺、右辺から、それぞれ「0.3×損益分岐点売上高」を引くと、0.7×損益分岐点売上高=70万円となり、これを計算すると、損益分岐点売上高=100万円となります。

というわけで、この事業部の損益分岐点売上高は100万円/月、ということになります。

数値で語って、ビジネスシーンでの説得力を高める。

前回の「経営が分かる! 管理職になる前に知っておきたい「ROA」とその使い方」で説明した決算書分析もそうでしたが、会計数値は算出するだけでは使っていないのも同然です。

冒頭で述べましたが、損益分岐点売上高を求めることによるメリットとは、次の2つです。

1)確保しなければならない最低売上額が分かる
2)コストを下げ、利益を増やすための判断ができる

例えば、自分たちの部署の損益分岐点売上高について計算してみたら、月に1000万円の売上が必要だと分かったとします。利益を出すには、1000万円よりももっと売り上げるか、1000万円も売れないとなれば利益が出るラインまでコストを切り詰めるか。こうして利益を増やすことができれば、ひいてはボーナスも増えるかもしれません。