損益分岐点売上高は、使える説得ツール

利益を上げるために、売上を上げていく方法を考えてみましょう。売上は単価×数量、あるいは客単価×客数というように“単価×数”に分解することができます。ここで“単価”を上げれば、売上を大幅にアップできる可能性があります。ただし、“単価”を上げた分以上に“数”が減れば、売上は下がってしまいます。このように、“単価”についてはその必要な売上を上げられるか否かという観点からの検討が必要です。

しかし、売上を作れる部署は限られます。そこでもう1つの方法、コスト削減です。コストはどの部署でも減らせます。

コスト削減のためには、コストの「かけ方」を変えなくてはいけません。コスト(総費用)は変動費と固定費に分けられますから、それぞれの減らし方を考えます。「固定費を下げる」、また「変動費の売上に占める割合を減らす」という2つの方法が考えられます。

一般的に変動費は、燃料費や原材料費など、経営者や担当者の力だけでは改善しづらい項目が含まれます。もちろん、仕入原価など、取引先との交渉によって下げる余地のあるものもありますが、それに比べれば、固定費の方が自社内で削減できる場合が多いものです。損益分岐点売上高は、コストのつかみ方のツールとしても覚えておくと、仕事で生かせるシーンが増えます。

「日々の業務のどこを変えるか」ということを理論的に説明する根拠として、こうした数値を使えれば、説得力が違ってきます。「なんとなくここが無駄に思える」「この事業の顧客を増やす必要がある」というように漠然と思いながらも、説明する手立てがなく、そのままにしてしまうということはありませんか。「会社をよくしたい」という思いをそのままにしないためにも、このシンプルな2つの式を使って会社の利益に貢献する提言を積極的に行えるといいですね。

小紫恵美子(こむらさき・えみこ)
株式会社チャレンジ&グロー代表取締役、経営コンサルタント事務所Office COM代表。2児の母。東京大学経済学部卒業後、大手通信会社にて主に法人営業に従事。1998年中小企業診断士取得後、のちに退職。10年間の“ブランク”を経て、独立開業。現在は企業研修講師や中小企業への経営支援、執筆活動を行う。企業研修では会計、ロジカルシンキング等ビジネススキルを伝えるとともに、女性経営者を中心に数値とロジックに基づいた経営の重要性を伝える自主セミナーを展開
最近は、これまでの実績と、自身の大企業勤務→専業主婦→子育てしながら独立開業、という経験を踏まえ、女性の働き方についての執筆や講演に力を入れている。「活き活きと働くオトナが増える社会」を目指して日々活動中。