04年秋、日産自動車の復活を象徴するように6車種が同時デビューする。星野さんたちが予測した販売台数の折れ線グラフに、毎月アップデートされる実績の販売台数を示すグラフがきれいに重なっていく。客観的な市場分析の確かさが証明され、星野さんのクレディビリティが揺るぎないものになった瞬間だった。
「マーケティング部門の勉強会などでも、『いやぁ、怖いくらい当たっちゃって』とデータを見せながら、いかに自分やチームがクレディブルであるかを宣伝して回っていました。私がクレディブルじゃないと、毎日のように小さなコンフリクトが起きますから」
さすがは予測のプロだが、人生には見通し困難なことも。
「子どもをもっと早く産めばよかった。周りの人たちが『子育ては大変よ』『もう仕事なんてできなくなるわよ』と言うものだから遅くなっちゃって。でも産んでみたらチョーかわいくて(笑)。5年も10年も夜泣きするわけじゃないし、そのうち保育園に行くようになるし。みんなが『子どもはかわいいわよ』と言ってくれていれば、あと1人、2人産めたのに」
予測の達人にして、唯一の黒星といったところだろうか。
■Q&A
■好きなことば
“勝ち”にこだわらなければ、“負け”から何も学べない
■趣味
スキー、水泳、ゴルフ、テニス、洋裁、読書、温泉、旅行
■ストレス発散
息子とのキャッチボール
■愛読書
日ごろはもっぱら歴史小説と推理小説。文学なら夏目漱石
1983年慶應義塾大学経済学部卒業。日本債券信用銀行を経て88年ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院にてMBA取得。89年より社会調査研究所勤務。2002年日産自動車に移り、市場情報室長。06年執行役員に就任。14年常務執行役員、15年専務執行役員。
撮影=澁谷高晴