お金をきちんとかける

待機児童問題は、一向に改善していないかのように見えますが、実は、都市部の保育所は、国が本格的にお金を投入し始めてから、目に見えて増設されるようになっています。

保育園を考える親の会の「100都市保育力充実度チェック」という調査冊子で首都圏主要都市と政令指定都市の状況(95市区ベース、4月1日現在)を見ると、2004-2009年の5年間の保育所数の増加は570か所程度でしたが、その後2014年度までの5年間では2030か所以上ふえています。この境目の2009年は国が2008年に開始した「安心こども基金」で保育所が整備されはじめた年なのです。そして、2014-2015年の1年間では321か所の増加がありました。回り道をしながら、待機児童対策がようやく国の政策の上位に上がり、お金が投入され、変化がありました。このあとも手を緩めずお金をかけていくことが必要です。とりわけ、「保育士不足」をという障壁を乗り越えるために、その処遇改善策をしっかり行う必要があります。

質にもこだわる

今、保育所を急整備している地域では、園庭のない保育所もふえてきました。保活に苦しむ親からは「もはや園庭にこだわっている場合ではない」という声も聞こえますが、子どもの心身が最も育つ時期、しかも1日10時間前後を過ごす環境がこんなことでいいのかと、自治体の整備方針に問題を感じています。

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横浜市が公表している入所保留児の内約

図は、横浜市が公表している入所保留児(認可を希望したが入れなかった子ども)の内訳です。横浜市の入所保留児は、2014年2384人から2015年2534人と150人増加しており、特に「特定保育園のみの申込者」の比率が顕著に増加しています。これは、通える範囲に他の認可保育施設・事業の空きがあっても辞退して特定の保育所等を希望しているケースの数です。実際の希望内容はわかりませんが、親が子どものために保育の質にこだわった結果だとすれば、このグラフは整備する保育の質が今後の障壁になる可能性があることを示唆していると言えます。