民間の力で難民支援:明かり

2つ目は、UNHCR最大のグローバルパートナー、IKEAを展開するイケア・ファウンデーションの取り組みです。彼らとは2010年よりパートナーシップを結んでいて、住居ユニット(シェルター)の開発や提供、マットレス&ベッドリネンの寄付など、衣食住の「住」を主軸に、さまざまなイノベーティブなアイデアで難民問題に協力いただいています。

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上/(C)IKEA Foundation 下/(C)UNHCR/Warrick Page

2014年から取り組んでいるのが、「難民キャンプに明かりを届けよう!」キャンペーンです。国境に近い辺境地では明かりがなく、テント暮らしの難民キャンプは夜になると真っ暗になります。日本では想像できないくらい深い闇に包まれてしまうのです。日が落ちるとさまざまな活動をストップせざるをえないので、暗くなる前に食事を済ませて眠り、明るくなったら起きる。そんな生活を、情勢が改善されて本来の住まいに戻る日まで、来る日も来る日も繰り返しているのです。

明かりがあったら、家族が語らう時間が長くなるかもしれないし、キャンプ内で教育を受けている子供たちは宿題ができるかもしれない。難民キャンプでは、炊事場やトイレは屋外にあるので、街灯があれば夜間出かける際の危険を軽減できます。表には出てきませんが、レイプや誘拐など、暗闇は深刻な危険をはらんでいるのです。

安全を求めて逃れてきた難民の方々にとって、難民キャンプは安全であるべき場所。明かりがあれば、本来の安全が手に入り、快適に過ごすことができます。

このキャンペーンでは、IKEAで全ての照明製品を一つ購入するごとに1ユーロがUNHCR活動に寄付されます。昨年は2回実施し、1850万ユーロの寄付が集まりました。ソーラーランタンや太陽電池式の街灯、太陽電池式エネルギーシステムが提供され、エネルギーの自立を支援いただきました。

さらにこのキャンペーンは、子供の教育の機会を提供する支援にもつながります。難民の方々が必要とされているのに私たちUNHCRが資金不足で提供しきれていない部分に、しっかりと手を差し伸べていただいている本当にありがたい支援です。

難民支援の一歩

ちょうど今、今年のキャンペーンの真っ最中(~2015年12月19日)。日本のIKEAも参画していますので、協力をよろしくお願いします。IKEAに出かけてLED電球や照明器具を買う。このアクションがUNHCRへの寄付になります。

自らのアクションは心に残ります。実はそれがとても大事なんです。難民問題は遠く離れた地域のことかもしれませんが、今まさに起きていること。アクションしたことで、メディアで流れるニュースに関心を寄せるようになり、自分もこの解決に携わっているんだ、という当事者意識につなげることができます。この意識づけが広報官としての私の仕事です。

※支援をご希望の方は~「もし、明日、故郷を追われたら(国連UNHCR協会)」https://www.japanforunhcr.org/

守屋由紀
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐日事務所 広報官。1962年東京都生まれ。父親の仕事の関係で、日本と海外(香港、メキシコ、アメリカ)を行き来しながら育つ。獨協大学法学部卒業後、住友商事に入社。5年後、結婚を機に退職してアンダーソン・毛利法律事務所へ。1996年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に採用され、2007年より現職。

撮影=石井雄司