いま活躍している女性管理職たちも、着任当初は不安も失敗もあったはず。ここでは彼女たちが着任した当初の100日間を振り返ってもらい、その実体験や乗り越えたエピソードを語ってもらった。

▼ユニクロ グローバルマーケティング部 グローバルプランニングチーム 統括リーダー 松本 葵さん
チームの能力を最大化するために配置換えも断行

自動車会社で海外マーケティングを担当後、ユニクロが海外展開を本格化した時期に転職し、シンガポールやパリでの開業を実質的に指揮した。そして社会人10年目、パリ オペラ店開店の3カ月後に昇進の辞令が出た。

松本 葵●ユニクロ グローバルマーケティング部 グローバルプランニングチーム 統括リーダー。日産自動車勤務ののち、2007年入社。パリ オペラ店、シンガポール店開業をプロジェクトマネジャーとして担当、09年から現職。

マーケティング調査をしたり、広告戦略などを考えたり、アメリカ事業拡大のため現地に駐在。部下は全員アメリカ人。チャンスを与える社風なので、断るという選択肢はない。まだ能力不足なのに着任することへの不安はあった。しかし上司には「わからない状態で取り組むからこそ、既成概念を壊し、新しい可能性が広がる。だから君に任せるんだ」と言われた。

海外業務経験は豊富で英語でのやりとりにも多少の自信はあったが、それでもプレゼンや部下に指示を出す前には、意思疎通面での問題を避けるため、「あらかじめ原稿をつくり、できるだけ論理的に、極限まで簡潔、明快になるように何度も書き直しました」。帰国後も、部下への指示を論理的で簡潔、明快にすることが大事なのは同じで、常に注意している。

そして管理職としての責任と役割を痛感したのは米国駐在時、初めて思い切った配置換えをしたときだ。米国は雇う側も雇われる側も自由意志で雇用契約を解除できる国だが、それでも精神的に大きな負担になった。だが、適性がなく、モチベーションが低いまま仕事を続けさせるのは、本人に何の益もなく、チームの士気も下がり、結局みんなが不幸になる。そして配置換えの判断と決定ができるのは管理職だけなのだ。

「ミッションを達成するため、誰を連れてきてどういうチームにするかデザインし、適性を見極めて適材適所に配置するのも仕事だと学びました」

▼新任管理職時代、こうして乗り切りました!

《Before》士気を下げるメンバーをチームから外す対処を迫られた
管理職になったばかりの米国駐在で、アメリカ人の部下を抱えることになった。あるメンバーに適性がなく、モチベーションも低いため、チームの士気が下がるという問題が起こった。


《After》適性を判断し配置換えをするのも責務と悟り実践した
マネジャーの仕事は既存のメンバーをそのまま受け入れるだけではなく、適性を見極めて、最適な人を連れてきたり、配置換えをしてベストチームをつくることだと悟り、転職してもらった。

冨田寿一郎=撮影