ユニクロの新社長に現場たたき上げの塚越大介氏が選ばれた。経営学者の中川功一さんは「前社長の柳井正氏には親会社ファーストリテイリングの役員になっている息子2人がいるが、世襲はしないと宣言していた。今回の人事はユニクロを44歳と若い塚越氏に任せても、組織はビクともしないという自信の表れだろう」という――。
車いすテニス元選手の国枝慎吾さんの引退会見に出席したユニクロの柳井正代表取締役会長兼社長(=2023年2月7日、東京江東区のユニクロ有明本部)
写真=時事通信フォト
車いすテニス元選手の国枝慎吾さんの引退会見に出席したユニクロの柳井正代表取締役会長兼社長(=2023年2月7日、東京江東区のユニクロ有明本部)

ユニクロは74歳の柳井氏から生え抜き44歳の塚越氏へ

9月1日、ユニクロに44歳の新社長が誕生した。

塚越大介氏。新卒でユニクロに入社後、抜群の成績を叩き出して頭角を現し、とりわけ長年の課題であった北米事業を立て直した人物。2005年の北米進出以来、初の黒字化を達成、そこから先の成長戦略にもめどをつけたことから、創業家社長であった柳井正氏のお眼鏡にかない、後継者として白羽の矢が立ったのである。

事業承継は、柳井正ほどの名経営者であっても、大きな課題として残り続けていた。柳井氏は早期から「世襲はしない」として、同族経営からの脱却を図っていたが、ユニクロの持ち株会社であるファーストリテイリングには柳井氏の2人の息子が取締役として入っていた。果たして柳井氏は宣言通り、同族経営を辞めるのか否か――。後継選びは、同社が抱える最大のリスクになってしまっていた。

そんな意味で、今回の人事は大きな意味を持つ。まだファーストリテイリングの後継が決まったわけではないものの、中核事業たるユニクロについて、同社は世襲をせず、生え抜きの若き実力者を選ぶ、という今後の方向性を示してみせたのである。この問題に決着がつけば、同社の経営体制は一層盤石なものになるだろう。

古来、事業承継を苦手としてきた日本社会

さて、辺りを見渡せば、日本には承継に悩む企業が少なくないことに気がつく。ニデックの永守重信氏、ソフトバンクの孫正義氏、楽天の三木谷浩史氏。皆さんの周りにも、社長の引退こそが会社の最大のリスク……という大小さまざまな企業が存在していることと思う。

事業承継は、なぜ、かくも難しいのか。一族での承継は、望ましいことなのか。承継の問題を、会社はどう乗り越えていけばよいのか。その背後にある日本の社会構造や、組織論的原因を探っていきながら、このユニクロの人事を読み解いていくことにしよう。

実はこの事業承継、現代企業に固有の問題というわけではない。日本では、昔から、人々は権力の承継に手こずってきた。唯一の例外は徳川幕府くらいのものである。織田信長も、豊臣秀吉も、足利尊氏も、源頼朝も、藤原道長も、次世代にその絶大な権力基盤を継いでいくことはできなかった。

実はそこには、日本を含む東アジア儒教文化圏に共通の理由がある。それは、私たちはこの社会を、人格によって統治してきた、ということである。