日本で起きやすい創業者シンドロームを回避するには?
創業者シンドローム自体は、日本のみならず世界的にみられる一般的現象である。制度・仕組みによる統治が不十分で、人格での統治の傾向が強い場合に生じやすいことから、日本で多くみられると考えられている。
関西大学の横山恵子教授たちが日本のNPO組織を対象に行った研究では、日本のNPOで創設者シンドロームは広範に観察され、そして、創業者の退任後には、おしなべて大幅な業容の縮小を経験していることが明らかになっている。NPOは、とりわけ創業者の理念によって作られ、動く傾向が強いからであろう。
解決策①「制度・仕組みによる統治を強化する」
では、創業者シンドローム問題を、どう解決すればよいのだろうか。一つの方策は、ワンマン経営者に頼らないよう「制度・仕組みを充実させる」ことである。西洋のシステムに近づけるのである。
トヨタ自動車が、同族企業でありつつ、それ以外の方が社長になってもうまく機能しているのは、トヨタが年月をかけて徹底的にミドルマネジメントの組織制度を作り上げてきたからにほかならない。現会長の豊田章男氏が去ったとして、トヨタの経営には良い意味で変化はない。仕事柄、トヨタの人に会うことがあるが、ある職層以上の人は、誰に会っても「トヨタの人」である。よく、ここまで堅牢な組織を作り上げたと感心する。
今回のユニクロの人事に、話を戻そう。筆者は、ユニクロの今回の人事は、同社のミドルマネジメントの組織が確立されてきた、ということだと分析する。柳井氏に徹底的に鍛え上げられた同社のマネジメント組織は、業界内外で「とんでもないスーパーエリートしかいない」と評される。
新社長の塚越氏が、いかに優秀であり、いかに実績があろうと、まだまだ未経験な点もある、44歳の若い人物であることは見逃してはならない。今回の人事は、自分が辞め、まだまだ成長余地を残した塚越氏が社長になったとしても、その程度ではびくともしない堅牢な組織・制度が作れた、という柳井氏のひとつの自信の表れであろう。