民間の力で難民支援:服のチカラ

1つ目の支援活動は、アジアで初めてUNHCRのグローバルパートナーとなった、ファーストリテイリングの取り組みです。

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(C)Shinsuke Kamioka

ユニクロを展開するファーストリテイリングは、2006年から、着なくなった衣類を難民に届けるお手伝いをして下さっています。着のみ着のまま逃れてきた人たち、例えば夏に逃れた人は、どうやって冬を乗り越えるのか、あるいはもう何年も衣類支援を受けられなくてボロボロの服を着ている人には何が必要なのか。成長期の子供も例外ではありません。人間が生きる上で欠かせない衣食住の「衣」なのに――。そんな現状を話したのがきっかけで、ユニクロがもともと手がけていた、フリース回収のプログラムをさらにレベルアップしてくださることになったのです。

現在は、あらゆるユニクロブランドの服を回収し、リユースできるものを難民キャンプに届けているんです。ユニクロのCSR活動の一環として、輸送コスト、通関などは全てカバーしてくださり、難民の方々に手渡すところまで社員の手で行っています。物資を滞らせないためにも、入口から出口までしっかりやりたいと徹底されています。

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(C)Shinsuke Kamioka

実際に難民キャンプに出かけると、ニーズを見つけてくることができます。服も地域や民族によって色や形など結構好みに違いがあるんですよ。宗教上の理由もあって、例えば体の線が目立たない服など、現地の文化に配慮しながら送っています。

ユニクロでは回収した服を、季節ごと、男女別、大人用子供用に仕分けし、現場のニーズを汲み取って配分します。ユニクロブランドはシンプルな服が多いので、現地の皆さんの民族衣装とよくなじんでいます。リバーシブルも2着分楽しめると喜ばれるのだそう。ファーストリテイリングは、2011年より、アジア企業として初めて、UNHCRとグローバルパートナーシップを結んでいます。

さらに新たに始めたのが、小・中・高校への啓蒙活動です。日本では難民問題はあまりにも知られていませんから。ユニクロのプロジェクトを通して難民のことを知ってもらうのが狙いです。

学生の皆さんには、「日本人は服を毎日着替え、季節によっても変える。服は自己主張できるおしゃれのアイテムのひとつ。でも、服が限られている状況では、暑さや寒さ、病気から身を守るためのもの。そのほか、学校へ行ったり、社会参加したり、あるいは女性が発言するために必要なもの、服の用途には日本では意識することのない役割があります。人間の尊厳を保つために服は必要なのです」と伝えています。

またこの活動では私たちUNHCRも学校へ出向きますが、職員の数にも限りがあるので、全国約800店舗を展開しているユニクロの各店長さんにもご協力いただいています。ユニクロでは難民に雇用機会も提供していて、インターンシップの後、現在13名が働いています。UNHCRにとって、とても心強いパートナーです。