例えば、メンバーが過剰に残業しないと仕事がフローしてしまう組織なのに、人を適正に配置すると利益が出ない状態になっていた場合。「それには目をつぶって、むしろ残業をみんなが進んでやる仕組みなり方法を考えろ」と上司から指示されたとしたら。頭を抱えたくなる気持ちは、分かります。

あるいはあからさまな情実人事、例えば、男性役員と管理職女性が恋愛関係にあり、その結果、女性の昇進が早くなるなどということが、まかり通っていたとして。人事を執行する当事者には文句が言えないし、恩恵を被る対象者にもいろいろなことが言いにくい状態になってしまう(読者のみなさんも大人ですから、分かりますよね、この感じ)。

明らかにおかしい、そう思うことでも言い出せない立場になってしまうことがあります。

「関わりたくない」が、「関わらなければならぬ」矛盾

職場の中や企業における不健全さが気になったとき、目を背ける、もしくは逃げ出す、できれば健全な状態に持っていくなど、何らかのアクションすることができるなら、それはある意味幸せな状況です。

しかし、キャリアの曲がり角くらいの年齢に達しているみなさん、管理職でおそらく仕事もバリバリこなしているような人には、次の試練が待っているはずです。それは「自分も不健全な状態の当事者にならざるをえなく」なってしまうこと。本音を言えば関わりたくない、けれども、関わらなくてはならない状態になってしまう。一人でどれだけ抗おうとも、結果として不健全に加担してしまうことになり、心の平静が保てなくなる……といったシチュエーションです。

さらに今のご時世、インターネットを通じて、他の企業の情報も相当量流通しています。それこそPRESIDENT WOMAN Onlineにも、健全で、見る人が見たら「まばゆい光を放っている」企業がたくさん登場しています。以前のように他社の事情はよく分からないのが普通なら「自分の周囲の常識=世間の常識」だったかもしれませんが、今はそうでもないことが事態をさらに複雑にしています(今でも、本当のことはよく分からないのかもしれませんが)。シンプルに一生懸命に仕事がしたいだけなのに、結果として、矛盾の中に巻き込まれてしまって、働くことすら嫌になってしまうというケースは意外に多いはず。