孤軍奮闘の日々
私がJFEに入社したのは4年前のことです。当時もいまも第3製鋼工場に限らず、鉄鋼業界には女性エンジニアがまだほとんどいません。この部署でも女性は私一人だけで、同期の友達もそれぞれの部署で孤軍奮闘しているという感じです。
理系学部出身の私たちにはもともと、「男性職場」に対する違和感はありませんでした。ただ、当初は現場のオペレーターさんたちがずいぶんと驚いていましたね。工場内では「ご安全に」と挨拶を交わします。その声が私だけ高くて注目を浴びたり――。
働き始めてすぐの頃は、「女性が来る場所じゃないよ」と言われることも確かにありました。「この子は怒っても大丈夫かな」という遠慮も周囲にあったようです。
それで少し悩んだ時期もあったけれど、これからこの業界を目指す後輩たちに私から言えることがあるとすれば、そうした雰囲気は自分の働き方次第ですぐになくなっていくということです。
例えば私が心がけてきたのは、単にオフィスの机で仕事をするだけではなく、一日に一度は必ず工場に顔を出して、オペレーターさんと会話をすることでした。いつもにこやかに「ご安全に」と元気に挨拶をすること。それを毎日しっかり続けるうちに、自然と受け入れられていったという気持ちがあります。
それから大事だったのは、仕事を進める上で常に自分の意見をしっかりと言う姿勢でした。何か現場で問題が生じたとき、相手の話を聞くのはもちろんですが、あくまでも「自分はこう考えているけれど、あなたはどう思いますか」と考えを先に述べる。実際にモノを作ってくださっている現場の方々に対して、エンジニアの立場からデータを上から示すのではなく、お互いの意見をすり合わせるように対話を重ねる姿勢が、何よりも大切だと感じています。
最近になって少し嬉しいのは、そうするうちにオペレーターさんたちから、いろんな相談を受けるようになってきたことです。現場が困っているとき、「中村に聞けばわかるよ」と言われるエンジニアになるのは、私にとっていまの大きな目標の一つです。