■明治大学教授・鈴木賢志さんから
提言:日本の「2つの文化」を壊すいいきっかけにしよう
日本生産性本部の『日本の生産性の動向』(2014年版)によると、日本の労働生産性はOECD加盟34カ国中で22位とイタリアやギリシャよりも低いそうです。なかでも問題とされているのが、ホワイトカラーの生産性の低さです。
「生産性が低い」というと、みんながサボっているようなイメージがわきますが、世の中のホワイトカラーの皆さんは朝早くから夜遅くまで一生懸命に働いています。なのに、なぜこんなことになっているのでしょう。
そもそも「生産性」とは、仕事の稼ぎを働く人の数(または働いている時間数)で割ったものです。つまり日本では多くの人が長い時間働いているのに、稼ぎが少ないのです。それはなぜでしょうか。多くの人が稼ぎにならない労働を強いられているからにほかなりません。
日本の職場には「グループ文化」と「出席文化」という2つの文化があります。グループ文化とは、グループで物事を進めるという名目の下で、個々の社員の役割や責任をはっきりさせない傾向のことです。そのため何事にもグループ内の意見調整が必要となり、いたずらに会議が長くなります。また役割が明確でないため、上司が部下を評価するに当たっては「その場にいるか否か」が重視されます。これが出席文化です。この結果、多くの人が会議には出席しているけれども参加していない(=稼ぎにつながる仕事をしていない)という状況が生まれるわけです。
安倍政権によるホワイトカラーエグゼンプションの導入は、これらの文化を破壊して、日本の企業が「一皮むける」きっかけをつくる可能性を秘めています。しかしそのことを意識せずに導入すれば、単にタダ働きを増やし、さらに悲惨な状況を招くことに注意しなくてはなりません。
撮影=的野弘路