尊敬する人なら素直に聞ける

つまり、経験値として残らない叱り方は、部下の成長にもつながりませんし、むしろ仕事に対してネガティブな感情だけが残ってしまいます。生産性が悪くなったり、上司と部下の信頼関係が崩れ職場環境が悪化する要因にもなります。叱るだけの明確な理由があるのか、感情と切り離したところで自分は叱っているのかということを常に心にとどめておかなければいけないと考えています。

また、そのうえでぜひ知っておいてほしいのは、叱るというのは話の内容よりも誰が言うかによって受け取られ方が変わるということ。叱る人が尊敬する相手であれば素直に聞けるものです。上司はふだんから部下に関心を持ち、相手のいいところを見て成長させてあげたいと思う。そう思う心がまた部下の素直な姿勢を育てることにつながるのです。

「その場で口に出さないで一晩おくと客観的になれます。」

どうしても感情が抑えられない場合におすすめなのが「腹立ち日記」をつけることです。これは精神科医の斎藤茂太さんの本に出てきたことですが、かっときたときに、その場で口に出さないでいったん書く。それを一晩置いておくと翌日はどうしてこんなことで怒っていたんだろう、なんて自分の感情を客観的に見ることができるものです。「腹立ち日記」は、なかなか有効ですよ。

それから、これは私の友人がしていたことですが、叱るときの様子を自分で録音しておいて、あとで聞く。友人によると、叱るのはすごく苦手だけど立場上、叱らなくてはいけないときがある。そのときに録音していた会話をあとから聞くと、あのときにこう言えばよかったとか、この言い方はまずかったとか、すごく反省することができて、それで勉強している、と。それを聞いて、そういうやり方もあるのかと感心しました。