「親しみやすさ」を演出する

聞き手がすでに「強さ」を認識している場合には、「親しみやすさ」を前面に出しましょう。親しみやすさの出し方は、(1)共感を表す、(2)共通点を見せる、(3)笑顔を見せるという3つのテクニックがあります。

「親しみやすさ」の3テクニック
(1)共感とは
プレゼンテーションの冒頭で、「皆さんはきっと非常に困難でストレスの多い状況にいらっしゃると思います」、「私が何をしに来たのかと不信感を持っている方もいるでしょう」と相手の心境に理解を示します。これによって「話が分かる、聞く耳も持っているのだ」ということが伝わります。
(2)共通点とは
例えば共通の趣味の話や、相手が関心を持っている事柄について話します。共通点が見つからない場合には、事前に調べておきます。相手に近づこうという気持ちは必ず相手に伝わります。また、自分の失敗談などもよいでしょう。例えば「仕事を始めたばかりの頃はミスばかりしていました」と自己開示することで「近寄りがたいと思っていたけど、自分と同じ悩みがあった」と思ってもらうのです。
(3)笑顔とは
ここで親しみやすさという観点で気をつけたいのは、親しみやすさ=「かわいさではない」ことです。癒されキャラや天然キャラを演出してもあまり意味がありません。ビジネスにおける親しみやすさはあくまでも、相手に近づくことによって生まれるものです。必要以上の笑顔や、かわいらしいしぐさ、言動は「弱さ」を感じさせる場合もあるので、気をつけましょう。

まとめ―鉄則は「存在感とギャップ」

「強さ」と「親しみやすさ」のバランスでプレゼンスを魅せるということを紹介しましたが、鉄則として覚えてほしいのは、まず“存在感”を感じさせ、次に“ギャップ”を感じさせるという順番です。自分が与えている存在感は、強さなのか親しみやすさなのか、その強さはどれくらいなのかを考えてください。強さをしっかりと伝えられたら、ギャップを出すことを意識して、相手にとっての親しみやすさを演出していきましょう。強さと親しみやすさのバランスで惹きつけるテクニックはあくまでも相手との関係性によって決まりますので、常に同じパターンではなく、自分が相手にとってどのような存在かを考えることからスタートしましょう。

清水久三子

お茶の水女子大学卒。大手アパレル企業を経て、1998年にプライスウォーターハウスコンサルタント(現IBM)入社後、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダーとして、数々の変革プロジェクトをリード。
2005年より、コンサルティングサービス&SI事業部門の人材開発部門リーダーとして5000人のコンサルタント・SEの人材育成を担い、独立。2015年6月にワーク・ライフバランスの実現支援を使命とした会社、オーガナイズ・コンサルティング
を設立。延べ3000人のコンサルタント、マーケッターの指導育成経験を持つ「プロを育てるプロ」として知られている。
主な著書に「プロの学び力」「プロの課題設定力」「プロの資料作成力」(東洋経済新報社)、「外資系コンサルタントのインパクト図解術」(中経出版)、「一瞬で伝え、感情を揺さぶる プレゼンテーション」、「外資系コンサルが入社1年目に学ぶ資料作成の教科書」(KADOKAWA)がある。