今できる準備を進めておこう

「でも、年金制度なんてどうなるかわからない。そんな計算してもムダなのでは?」――そんな声が聞こえてきそうですね。

確かに年金財政は厳しくて、「どうなるかわからない」というのも事実です。支給開始年齢を70歳に引き上げる案もあるし、また数年前に民主党が提案した「最低保障年金」のように、制度自体が大きく変わる可能性もあるでしょう。それでも、年金制度自体がまったくなくなることは考えられないし、新しい制度に変わったとしても、これまで年金保険料を払った実績が無になることもないはずです。

年金の支給開始年齢は今、60歳から65歳に引き上げられているところですが、これだけで25年近くかかります。年金制度は巨大で鈍重な船のようなもので、方向を変えるには長い時間がかかるのです。

もしも制度が変わったら、そのときはそれに合わせて、資金計画を変更すればいいでしょう。制度変更はゆっくりと進むので、対応する時間はあるはずです。それまでは、今の制度をベースに、今できるだけの準備を進めておくのが現実的だと思います。

「年金なんかアテにならない」と考えて老後の生活費をすべて自分で貯められるなら理想的ではありますが、普通の人にはまず無理というもの。反対に「アテにならないから考えてもムダ」といって何もせずにいたら、老後になって資金が足りなくなるのは間違いありません。

今の制度を知らずにいたら、もし制度変更があっても、どこが変わったかわかりません。今後の変化に対応するためにも、今の制度を知った上で、これからの年金のニュースをチェックするようしましょう。

マネージャーナリスト 有山典子(ありやま・みちこ)
証券系シンクタンク勤務後、専業主婦を経て出版社に再就職。ビジネス書籍や経済誌の編集に携わる。マネー誌「マネープラス」「マネージャパン」編集長を経て独立、フリーでビジネス誌や単行本の編集・執筆を行っている。ファイナンシャルプランナーの資格も持つ。