子どものフィットする居場所を

親は、利便性や安全性を第一に考えがちですが、学童保育は子どもが自分の足で通うので、子ども自身がフィットすることがとても大切になります。選べる場合は、子どもの性格や意見も考え合わせて選ぶ必要があります。

選べない場合は、親子でよく話し合い、安全のために子どもに必要性を理解してもらって通ってもらうしかありません。通ううちに楽しくなることもあります。

と書きながら、一番思うのは、やはり一定の質を備えた、子どもが喜んで通える学童保育をふやしてほしいということです。

放課後に子どもは育つ

厚生労働省は、今年4月に、「放課後児童クラブ運営指針」を発表しました。(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000080764.html

この内容は、実に示唆に富んだものになっています。子ども・子育て支援新制度実施に伴って、学童保育の基準も定められたのですが、指針では、基準に加え、6歳から12歳までの子どもの発達過程を解説し、そんな育ちを支えるために、学童保育はどうあるべきかということが述べられています。ちょうど保育園に保育所保育指針があるように、子どもをしっかり見つめた内容になっているのです。

たとえば、児童期の子どもが、遊びの中で自己の欲求と他者の欲求を折り合わせるために、がまんをしたり順番を待ったり約束を守ることなども身に付けるようになることが述べられ、遊びに子どもが自発的に参加し、遊びの楽しさを仲間と共有するために、大人の援助が必要な場合もあるとも書かれています。

依存からだんだんに自立へ向かう児童期の心の発達についてもふれ、大人が配慮すべき事柄について発達過程別に記されています。

学童保育の指導員にも専門性が求められているのです。そして、指針が示すような放課後生活を実現するためには、施設環境も重要です。

つまるところ、「小1の壁」をなくすためには、学童保育の質の向上が必要であることを、改めて強調しておきたいと思います。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』『共働き子育てを成功させる5つの鉄則』(ともに集英社)、保育園を考える親の会編で『働くママ&パパの子育て110の知恵』(医学通信社)、『はじめての保育園』(主婦と生活社)ほか多数。