男性が育児に参加しづらいのは、長時間労働を前提とした企業環境や、「男は仕事に生きるべし」という空気、それぞれの個人が持つ人生の価値観など様々な要因が関係しているが、実はネックになっているのは“オカネ”かもしれない。
男性側も育児をしたいという意欲はあっても、平均賃金が男性優位の日本では「稼ぎ頭が休まれたら困る」という家庭の事情がある。なぜなら、2013年度までは育児休業中に支給される収入=「育児休業給付金」は休業前の50%だったからだ。
夫の給料が半減するリスクをとるより、妻が頑張って育児を担うという選択をする夫婦が多いのは当然かもしれない。
この収入の心配を解消するアプローチとして注目されているのが、2014年4月に改正雇用法の一部施行による、育児休業給付金は67%にアップという“育休改革”だ。
雇用保険料の免除なども計算すると、約8割の収入が保障されることになる。育休当初180日間に限定されるとはいえ、夫婦が交代で取得すれば、片方の収入80%キープのまま1年は育休取得が可能になる。
さらに2015年度からは、男性の育児休業取得率が13%を超える企業には法人税軽減をするという方針がほぼ固まっている。13%といえば「7人に1人」で、ひとつの課やチームに1人は「育休男子」がいるような風景がイメージできる。家庭の財布だけでなく“企業の財布”も支える政策が踏み込んで実施されることで、「育休男子」は加速度的に増えそうだ。
結果、女性の育児負担が軽減され、キャリアを中断する女性は減り、「産んでも辞めない」が初めて過半数を突破。新たなスタンダードになる(……と期待したい!)。
一方で、「即戦力になるマネジャー候補」として中途市場でも女性の需要が増すことから、新卒時代に氷河期で辛酸をなめた30代半ば~後半世代にはヘッドハントの引き合いが増え、リベンジを実現する女性たちが増えるだろう。
こうして、「ブランクを経て復職した元主婦社員」「仕事一筋でずっとやってきたシングル社員」「育児や介護で残業できない制約社員」など、“働く女の多様化”はますます進んでいく。