困ったのがギプスです。いくらなんでもギプスをしたまま試合はできません。しかし、手術をしたばかりの私の左手首からは、三本のボルトが肌を破って二センチも突き出ているので、ギプスを外すのは無理。
仕方がないので母と一緒に病院に行き、渋る担当医に親子で何度も頭を下げ、ボルトの突き出している部分を削ってもらいました。それで、試合当日はその部分をテーピングでぐるぐる巻きにして出場したのです。
といっても左手は折れたままですから、私にできるのは右手一本のタックルだけ。でも、父はそれで勝てるといいます。そして、本当に片手だけで戦って、優勝してしまいました。
こういう環境で育てば、それは嫌でもメンタルは強くなります。
だから、メンタルを鍛えたいなら、できるだけ厳しい環境に身を置くことです。
あとは、やっぱり自分の意識。
イチロー選手は高校に入学して野球部の寮に入るとき、寝る前の10分間は必ず素振りをすると決め、それを卒業まで1日も欠かさず続けたという話を聞いたことがあります。
素振りならやる気さえあれば誰だってできます。だけどそれを3年間続けるには、強靭な精神力が必要です。
イチロー選手だってきっと、今日は疲れているからさぼろうとか、1日休んでもどこかで取り返せるとかいう悪魔のささやきに負けそうになったことだってあると思います。
だけど、負けなかった。妥協しなかった。
そうやって自分で自分の心を鍛え、強靭なメンタルを獲得したからこそ、後に数々の栄光を手にするようになったのです。
苦しくても絶対に相手より先にギブアップしない、強い心の持ち主になる。絶対になってみせる。
そういう覚悟がなければ、いくら世界チャンピオンに教わっても、メンタルを強くすることはできません。