アスリートはもちろん、ビジネスマンだって最後にものをいうのはメンタルの強さだと思います。今回は強いメンタルの獲得の仕方についてです。

メンタルを鍛えるのは環境と意志

メンタルの強さというのは、見た目に表れるものではないので、鍛えるのもまた難しいといえます。

私自身は、まあ強いほうじゃないでしょうか。そして、それは吉田家という環境のおかげです。

子どものころからずっと私は、父の目の届くところでレスリングをやってきました。学校が終われば走って帰ってきて自宅の道場で練習、週末は出稽古か大会。友だちみたいに、日曜日は遊びに行きたい、もっと自由な時間がほしいと思ったこともありますが、だからといってそれを父に訴えたことはありません。言ってもどうにもならないとわかっていたからです。

ウチはウチ、ヒトはヒト。吉田家には吉田家のルールがある。それが父の揺るぎない信念でした。

しかも、父はとてつもなく怖いので、父に「こうしろ」と言われたら、家族は「はい」と従うしかないのです。

いまでも忘れられない出来事があります。中学生のころ、全国大会を一カ月後に控え、気合いが入りすぎたのか、私は練習中に左手を脱臼骨折してしまいました。

緊急手術を受け、手首の折れた部分を三本のボルトで固定し、さらに全体をギプスで覆われたため、左手は動かすこともままなりません。

この状態では優勝どころか、戦うのも無理です。当然、大会は欠場だと思っていました。

ところが、そんな私に父はこう言ったのです。

「片手でも戦える」

私は耳を疑いましたが、父は平然としています。もちろん、反論の余地などあるはずもなく、これで強行出場が決まりました。