ライバルは必要

常に高いモチベーションをもって練習に取り組むためには、「次の試合で勝つ」「大会で優勝する」といった具体的な目標が必要です。

そして、もうひとつ欠かせないのがライバルの存在。絶対に負けたくない、どうしても勝ちたいという選手がいれば、練習で手を抜こうなんていう気にはなりません。逆に、この時間も相手は必死でトレーニングしていると思ったら、自分だって負けてなるものかと自然とファイトが湧いてきます。

かつて、私には山本聖子さんという最大のライバルがいました。

彼女との初対決は1986年JOC杯ジュニアオリンピックの決勝。そのときは2歳年上の聖子さんに、私はまったく歯が立ちませんでした。その後もまるで勝てず、気がつけば公式戦5連敗です。

私はなんとか彼女に勝ちたいと大学入学後、栄監督の指導の下で自慢のスピードに加え、弱点だった腕力とスタミナを徹底的に鍛え、2002年のジャパンクイーンズカップでようやく判定勝ちすることができました。

女子レスリングが初めて正式種目に採用されたアテネオリンピックの代表を懸けて戦った2004年のジャパンクイーンズカップの決勝も、相手は聖子さんでした。このときは3本のタックルを決めた私の完勝。この試合がいまでも私のベストバウトです。

現在は特定のライバルはいません。強いていえば世界の全選手がライバルです。

誰もが私のタックルや戦い方を研究し、対策を練って戦いを挑んできます。そういう人たちを一人ひとり倒していく。それが頂点を行く者の宿命なのです。

※このインタビューは『迷わない力』(吉田沙保里著)の内容に加筆修正を加えたものです。

取材構成=山口雅之 写真=公文健太郎